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同じ競技という勝負の場で競う兄弟姉妹の心の内を考える~高木菜那・美帆(スピードスケート選手)

髙木姉妹は、愛嬌のある顔立ちはよく似ているが、妹・美帆の方が身長が10㎝近く高い。この体格差は、スポーツ選手にとっては大きなことだろう。
実際、姉妹が小学生の時に出場した「全十勝児童スケート選手権大会」では、小学4年生の菜那が、妹の2年生の美帆にタイムで上回られたこともあったという。

しかも、先に人々の注目を集めたのも美帆の方であった。
美帆は中学3年生だった2009年、翌年に行われるバンクーバー五輪の代表を選考する大会で、1500m優勝、1000m3位と素晴らしい成績を残して代表に選ばれた。「スーパー中学生」ともてはやされ、五輪の大舞台に立つ妹の姿を、菜那は観客席から見つめるしかできなかったのだ。
この時菜那は、「妹が晴れやかな舞台に立っていることに嫉妬し、心の底から応援することが」できなかったとし、「美帆選手がレース中に『転べはいいのに』とまで思った」そうだ(『髙木菜那・美帆 ともに頂点へ』林直史・著 汐文社)。後から競技を始めた弟妹に先を越される悔しさというのは、兄姉ならば誰しも思い当たる節があるのではないだろうか。

この悔しさをバネに練習を重ねた菜那は、4年後のソチ五輪代表に選出された。一方、美帆は選考会で5位に終わり、代表入りを逃した。美帆は「オリンピックに行きたい」と繰り返し口にする姉を冷めた目で見ていたと言い、そうした「気持ちの差」が結果にあらわれると強く思ったという(前掲書より)。

様々なものを乗り越えての勝利の未来はまだまだ輝き続ける

どんなに超人的に見える兄弟姉妹選手でも、そこには比較される悔しさもあり嫉妬もある。要はそれを原動力とできるかどうかで、平昌五輪に揃って出場を果たした髙木姉妹の姿は、嫉妬や比較を乗り越えたうえのそれであったのではなかろうか。

今年2月11日に開幕した全日本選抜長野大会で、美帆は出場した1000m、3000m、1500mの3種目で国内最高記録を更新する圧倒的な滑りを見せ、3冠を達成した。一方、菜那は1500mで3位につけた。

来年に予定されている北京冬季五輪で、姉妹2人揃った姿がまた見られると良いな、と今から思っている。

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オギリマサホ

1976年東京都出身。イラストレーターとしてシュールな人物画を中心に雑誌や書籍などで活躍。中学1年までは巨人ファンだったのが、中2のときに投手王国・広島カープに魅せられ、広島ファンに転向。そのカープ愛が炸裂するイラストエッセイ『斜め下からカープ論』を刊行。野球のみならず、広くスポーツ界を愛している。
Twitter@ogirim

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