よみタイ

ライジング!
今や、当たり前にスマホで漫画を読む時代。
才能ある作家と、新しい読者をつなぐために――編集者は新たな挑戦に乗り出す!
とある出版社の漫画アプリ開発に秘められた、汗と涙と笑い(と美食)を描くお仕事小説、開幕!

前回、アプリ修正のために現れた助っ人は伝説のプログラマーだった。とりあえずの応急処置は終えたものの……。

小説「ライジング!」は『週刊ヤングジャンプ』公式noteでも絶賛連載中です。

※この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。

第26回 一度裏切ったら、二度目はない……!明暗を分けた上司の決断

「ライジング!」 第26回

 河原崎や大殿の尽力もあり、朝の五時になるとアプリは正常に動き出していた。
「これで解決ですね!」
 笑顔を見せる松田を見て、河原崎はクールに答えた。
「いや、あくまで応急処置が終わっただけだよ。ずっと血は流れてる状態だね。輸血してるから死にはしないけど、抜本的解決には至ってない」
「そんな……」
「しばらくは大丈夫だけど、ユーザーが増えると今の方法でもいずれ限界が来るね」
「そうですか……でも、ここまで回復していただいてありがとうございます」
「別にいいって。プログラマーってさ、中身の分からない箱を渡されると、開けて中がどうなってるかを覗いてみたくなっちゃう人種なんだよ。オレも久々に知的好奇心が刺激されたよ。さて、もうちょっとやるから、キミは仮眠でもとりなよ」
「いえ、僕は平気です! 河原崎さんこそ寝てください」
「それは無理。一回作業に入ると、頭が冴えて二日は寝られないんだよ」
 河原崎は涼しげな顔でそう言うと、指をコキコキ鳴らしてから再びキーボードを叩き始めた。

 朝の十時になり、小柴が仮眠から目覚めた。机に突っ伏して寝ていたので、体のあちこちが痛い。ゆっくりと体を起こし、おそるおそる伸びをする。関節という関節が全て痛みを発したが、体の疲れはいくぶん取れている。
 編集部を見渡すと、ほとんどの人間は一旦帰宅したようだった。河原崎だけがパチパチとキーボードを叩いている。小柴は〝マンガホープ〟が危機を脱したところで安心して仮眠を取ってしまったが、河原崎はずっと作業していたようだ。
 小柴は河原崎の元へ行き、ねぎらいの声をかけた。
「お疲れ様です。少しはお休みになられました?」
「いえ、あんまり疲れてないので。あ~、でも外のコーヒーメーカー勝手に使ってエスプレッソだけ何杯かいただきました」
「どうぞどうぞ。もう何リットルでも飲んでください。食事はどうされますか? 出前取りますけど」
「昼になったらいただきます」
「分かりました」
 そう言って小柴が廊下に出ると、打ち合わせスペースで野島と松田が何やら深刻な顔で会話をしていた。
「あ、コシさんおはようございます」
「おはよう。キミらは寝てないのか?」
「いえ、オレもタイヨーも朝方寝て、ついさっき起きたところです。それでちょっと相談というか考えがあるんですけど、コシさんにも聞いてほしくて」
「分かった。ちょっと待っててくれ」
 トイレを済ませて、顔を冷たい水でバシャバシャ洗うと、頭がだんだんスッキリと目覚めてきた。ハンドペーパーで顔の水滴を拭い、打ち合わせスペースに戻って椅子に座ると、松田が待っていましたといわんばかりに身を乗り出した。

1 2 3

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

志田用太朗

京都府出身。小説家。
第16回エンターブレインえんため大賞優秀賞を獲得して、2015年にデビュー。
集英社みらい文庫からは『僕らのはちゃめちゃ課外授業 一発逆転お宝バトル』シリーズなどが好評発売中。

週間ランキング 今読まれているホットな記事