2026.4.1
感情を持つロボットを作ることはできるのか? 大阪大学准教授・堀井隆斗インタビュー
こんな問いを考えたことがある人は多いかもしれません。
そういった「赤い感じ」や「コーヒーの香りのあの感じ」等は、〈クオリア〉と呼ばれています。
重要なテーマであっても、これまで科学的にアプローチしにくかった〈クオリア〉。
そこにいま、様々な分野の最先端の研究者たちによる、新たな研究が進んでいます。
〈クオリア〉を探求する多様な研究者に話を聞く、インタビュー連載です。
大阪大学准教授の堀井隆斗さんは、ロボットの友人を作りたいという。そのために欠かせないのが、深いコミュニケーションを可能とする感情だ。異なる身体の持ち主と、共感可能な感情を共有することはできるのか?
(聞き手・構成・文責:佐藤喬、特別協力:藤原真奈)

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感情を持つロボットを作りたい
僕は子どものころ、『勇者警察ジェイデッカー』というアニメが好きでした。主人公と、人工知能を搭載したロボットたちが登場するんですが、そのロボットが、だんだんと心を手に入れていくストーリーなんですね。
その影響という訳でもないですが、僕は、「友達ロボット」を作りたいと思っていました。友達というからには、単に性能がよいだけではだめで、喜びや悲しみを共有できたり、深く共感してくれたりしなければいけません。つまり、感情や意識が必要です。
それから、友だちロボットと感情を共有するためには、私の感情とロボットの感情が共通していなければいけません。人間が友人や恋人の話に共感できるのは、相手が感じた痛みや嬉しさを、理解したり想像したりできるからですよね。まったく感情の構造が異なる相手だったら、共感することは難しい。
でも、相手の心の中は覗けませんから、たとえば同じ映画を見たとして、僕が感じている悲しさと、相手の悲しさが同じかどうかはわかりません。他者のクオリアが自分と同じかどうかは確かめられない。でも、なぜか僕たちはコミュニケーションがとれています。
個人の内面の奥底深くにあるけれど、他者とのコミュニケーションに重要な役割を果たす。そんな、不思議な存在である感情を「創る」にはどうすればいいのか? それが、10代からの僕のテーマです。
これからお話しする僕の研究はかなり独特で、しかも複数のテーマがあるので、一見、分かりにくく感じられるかもしれません。でも、そのすべては「感情を理解する」という一点に集まりますから、ちょっと我慢して読み進めてもらえると嬉しいです。
子どもはどのように感情を手に入れるのか?
子どものころの僕は、今思うと意識についての哲学的な疑問も抱いていたのですが、なによりも「感情を持つロボットを作りたい」という考えが強く、高専(高等専門学校)を経て大学院に進学しました。
院で主に取り組んだのは、ロボットではなく、人間の子どもが感情を手に入れていく仕組みの研究です。
実は、これまでの研究で、人間の乳幼児の感情は大人のように複雑ではないことが分かっています。たとえば、生後すぐの乳児は快・不快の感情しか示さないのですが、成長とともに喜び、悲しみ、驚き、怒り……といった感情を見せるようになるんですね。その仕組みには、「感情の作り方」のヒントが潜んでいるように思ったんです。
ただし、僕がとった方法は、発達心理学者の森口佑介さんのような、直接に子どもを対象に実験や調査を行うものではありません。言葉をしゃべれない幼児相手だと、感情のような主観的なものを研究するのは簡単ではないですしね。
作って、動かしてみる「構成論的アプローチ」
僕の方法はそうではなく、「構成論的アプローチ」と呼ばれるものです。これは耳慣れない言葉かもしれませんが、僕が今取り組んでいるロボット作りにも関わることなので、少し脇道に逸れて説明します。
構成論的アプローチとは、簡単に言うと、「実際に作って、動かしてみて理解する試み」です。たとえば、人間のように滑らかに歩くロボットを作りたいならば、簡易的な脚を持つロボットを作って歩かせてみることで、「歩くためには何が必要か」「歩くとはどういうことか」を確かめるアプローチです。
ここで重要なのは、構成論的アプローチで作ってみるものは、具体的なモノでなくてもよい点です。コンピュータ上のプログラムやシミュレーションでもいいんです。そして、院生時代の僕が取り組んだのも、コンピュータ上に幼児の感情の計算モデルを作り、それを動かすことで、感情が発達していく様子をテストすることでした。
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