よみタイ

鈴木涼美「○○○な女~オンナはそれを我慢している」
よみタイでの大好評連載「アラサー女がそんなことで喜ぶと思うなよ」(6月5日書籍発売予定)を終えた鈴木涼美の次なるフェーズは、オンナ目線の女性論。ふと見渡せば、耳に目につく、いろんなタイプ・○○○な女たち。女の敵は女じゃないけど、ちょっとどうなの、それでいいの、な現代女性像を浮き彫りに。

彼女未満の女〜オナニーは一人でしておくれっていう話

伊藤野枝は28歳で殺害された時、お見合いもして駆け落ちもして結婚・離婚して、愛人になって、略奪愛の末に後妻までやって子供もたくさん産んで母もやって、多分男に対して女性が取れる肩書きのほとんどをクリア済みだったと思われるのだけど、フツウの女はそんないろんな意味でアナーキーに生きるほどの思想も勇気もないわけで、そのうちの一個すらなかなか手に入れられずに四苦八苦することになります。

カノジョになりたいのにセックスするだけで付き合おうって言ってくれない、妻になりたいのに同棲してても結婚の話はしてくれない、好きって言ってくれるけど本命のカノジョと別れて私を一番にはしてくれないなどなど。

いい年の男が「好き」とは言うけど「付き合おう」とは言わない不具合

いい年の男とそれなりに身体も心も仲良くなると、男が「好き」とは言うけど「付き合おう、彼女になってください」は言わないというのは、もはや夏の山では蚊に刺される、とか、長時間パソコンで仕事をしてると目と肩が疲れる、とかいうのと同じくらいは普遍性のある、よく聞く不具合ではある。

男の方の多様性も一応認めると、本当に好きだし一番大切だけど縛られるのは嫌、というある意味悪気がゼロであるが故に解決策のない自分勝手な非・悪人から、好きって言っときゃやらせてくれるだろうし付き合ってと言わなければ後で既婚なのがバレた時にトラブルにはならないだろう、などと考える割と悪気と目的がある非・善人まで色々なタイプがいることにはいる。

元歌舞伎町スラムの一員として見ると、「好き」=ホストで言うところの色恋営業「付き合う」=ホストで言うところの本カノ営業、となって、色恋営業は店の中やせいぜいアフターで完結させようと思えばできる上に、ラインしただけで喜ばれるけれど、本カノ営業となると他の女と遊んでいるのが見つかったら切れる原因になるし、自宅に招き入れないと怪しまれるし、相手の自宅にも行かなきゃいけないわけだし、そのうち同棲話を持ってこられるし、ラインの返信が遅ければ烈火のごとく罵られるし、ネット掲示板で「本当の彼女は私」という暴露バトルを繰り広げられるし、伴うリスクとコストが雲泥の差なので大変わかりやすい。

 

歌舞伎町の法則
歌舞伎町の法則

だからベテランのホストは「好き」以外にも「付き合う」という言葉だけを使わないあらゆる愛の言葉を知っていて、「どう考えても彼って私のこと好きなんですけど?!」と女に思わせながらも核心には迫らないプロなので、私も含めた元ホスト通いの女たちは「付き合う」以外の言葉に対しては基本的に価値を見出さず、同棲などの具体的措置のない愛の言葉に大変懐疑的である。

ホスト狂いが世に誇れる唯一の教養。

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鈴木涼美

すずき・すずみ●1983年東京都生まれ。作家、社会学者。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、東京大学大学院学際情報学府の修士課程修了。大学在学中からキャバクラ嬢として働きだし、20歳でAVデビュー、出演作は80本以上に及ぶ。2009年から日本経済新聞社に勤め、記者となるが、2014年に自主退職。女性、恋愛、セックスに関するエッセイやコラムを多数執筆。
公式Twitter → https://twitter.com/suzumixxx

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