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せきしろ「東京落物百景」
落とし物の数だけ、物語がある――落とされたモノにも、そして落とした人にも。
『去年ルノアールで』『たとえる技術』などの著作で知られる作家せきしろが、東京の街の片隅で、本当に見つけたさまざまな落とし物について考える妄想ノンフィクション。

前回は誰もが見つけることができる落とし物、潰れた空き缶からいろいろ考えた著者。

今回は紙袋。しかし、ただの紙袋ではなく「17位」という数字が書かれているから妄想が止まらなくなって――

(写真/ダーシマ)

「17位」と書かれた紙袋の落とし物から、いろんな17位を調べてみて到達した国とは?

都内の路上で見つけた破れた紙袋。右上の数字に注目!
都内の路上で見つけた破れた紙袋。右上の数字に注目!

ゆるキャラグランプリ2019の17位は『ざおうさま』

紙袋が落ちていた。紫色の紙袋である。

通常なら「これは落とし物ではなくただのゴミだ」と判断して歩き続けるところだ。
しかしそうせずに足を止めたのは、「17位」と読める文字が書かれていたからだ。この瞬間、目の前の袋はゴミから「17位の景品」へと変わったのだ。

ところで17位である。17位がどれくらいのものなのかいまいちピンと来ない。そこで私はいろんな17位を調べてみた。
ゆるキャラグランプリ2019の1位は『アルクマ』であるが、17位は『ざおうさま』である。宮城県蔵王町のキャラクターでゲートポールと自転車が得意らしい。ちなみに2018年の1位は『カパル』で、17位は1年後見事グランプリに輝く『アルクマ』である。アルクマブレイク前夜だ。

カパルは河童であり、河童つながりで河童が好きな食べ物であるきゅうりの生産量を調べると、17位は佐賀県と出てきた。江頭2:50さんやおほしんたろうさんの出身地で、松雪泰子さんも佐賀県出身なのに公表してないとはなわさんが歌ったことでお馴染みの佐賀県である。

この大ヒットとなったはなわさんのCD『佐賀県』であるが、これを発売したのが2003年であり、この年のCD売り上げ17位はKinKi Kidsの『永遠のBLOODS』なのである。

そして2020年の17位の景品。中身はわからない。想像するにはヒントがなさすぎる。そもそも何の大会の17位かもわからない。

せめて1位の景品がわかれば、そこから順に景品を考えていことはできる。もしも1位が高級和牛だとしたなら、そこから食品に絞って考えていき、値段を下げていって17位は駄菓子あたりだと推測し、きっと『蒲焼さん太郎』だと考えるのだ。しかし「おいおい、『蒲焼さん太郎』はもっと上だろ!」とか「『蒲焼さん太郎』の評価が高すぎるよ。『蒲焼さん太郎』は最高でも30位だ」などという人もいるだろうから、やはり予想は難しい。

こうなるともう決めつけるしかない。これはFIFA世界ランキングの17位の景品ということにしてしまおう。この原稿を書いている時点の17位はチリであるから、これはチリにプレゼントされた景品だ。「おめでとう、チリ!」と言われて渡されたものなのだ。中身はきっとサッカーに関するもので、サッカーのトレーディングカードかサッカーボールのスーパーボールかサッカーボール型のチョコレートあたりだろう。

決めつけが終わり、「仮に本当にチリの景品だとして、それがなぜここにあるのか?」という疑問が浮かび上がってくる前に私は再び歩き出した。

ちなみに思わず拾ってしまう落とし物第1位は財布だろうが、この紙袋は何位になるのだろう。それこそ17位なのか?

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せきしろ

せきしろ●1970年北海道生まれ。主な著書に、映像化された『去年ルノアールで』や、映画化された『海辺の週刊大衆』、『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』(共に双葉社)など。また、又吉直樹氏との共著『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』(幻冬舎)、西加奈子氏との共著『ダイオウイカは知らないでしょう』(マガジンハウス)も。
ツイッターhttps://twitter.com/sekishiro

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