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パンの大量廃棄問題。常識を打ち破って成功した、広島の「捨てないパン屋」の秘策とは?

捨てないお店で買った食品を捨てずに食べ切ろう!

田村さんは、ヨーロッパで消費者の意識の違いも実感したそうです。
「お客さんは、少々見た目が悪かろうが、中身を重視する。何が重要で何がそうでないか分かっている。日本は見た目だけ華やかにしておけば満足する」

日本が見た目や規格を重視する背景には「モノづくりの国」として大量生産の「製造業モデル」のビジネスを進めてきたこともあるように思います。
全てキッチリ揃っていることや見た目が美しいことを求めます。タピオカドリンクなど「映える」食べ物をインスタにアップしながら、実際には食べずに捨てることも問題となりました。

日本は見た目や規格にも厳しいため、裏ではたくさんの食品が捨てられています
しかも、私たちは、そんな見た目も整ったたくさんの種類の商品が、いつお店に行っても買える状態を当たり前と思っています。
でも、品切れしないためのコスト、捨てるコストは、知らずに消費者が払わされているのです
本来は、味がおいしければ見た目は気にならないはずだし、必要な数作って売り切るやり方がいいはずです。

完全予約制のお店は廃棄が減り、利益率も高い傾向がある。
完全予約制のお店は廃棄が減り、利益率も高い傾向がある。

必要な数だけ作って、余らせないための方法の一つに予約販売制があります。
私の知人のパン屋さんも、田村さんの働き方に影響を受け、完全予約制に転換しました。
とはいえ、完全予約制のパン屋なんてなかなか周りにないですよね。
でも、普通のパン屋さんでも、お店にお願いすれば予約しておいてくれる場合もあります。私が買いに行っていたデパ地下パン屋は、あらかじめ電話か来店で予約すれば確保してくれました。

予約制に対応している、あるいは、閉店間際に大量のパンを売れ残していない、そんな「捨てないお店」を積極的に利用することも、ロスを減らすためにできる行動の一つです。

【捨てないコツ】
・味や品質重視。見栄えには過剰にこだわらない。
・見かけ上の安さにつられて買うことなく、グラムあたりの値段を確認する。
・食品価格には「捨てるコスト」も含まれることを意識する。(捨てない店ならその分、売価が下がったり、より良い材料に使われたりするはず)
・事前予約制を利用して買い物をする。

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新刊紹介

井出留美

いで・るみ●食品ロス問題ジャーナリスト
奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。311食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。「食品ロス削減推進法」成立に協力した。政府・企業・国際機関・研究機関のリーダーによる世界的連合Champions12.3メンバー。
『あるものでまかなう生活』(日本経済新聞出版)、『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬社新書)、『捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ』(あかね書房)など著書多数。
食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。

公式サイト●http://www.office311.jp/
Twitter●@rumiide

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