日本では1年間に約612万トンもの食品ロスがあり、実は、そのうちの半数近くにあたる284万トンは、一般家庭から捨てられているのが現状です(2017年、農林水産省・環境省調べ)。
いきなりガラリと買い物や食事のスタイルを変えるのは難しくても、身近な食材一つずつから付き合い方を見直して、無理なく着実に“もったいない”を減らしていきませんか?
地球にもお財布にも優しい「捨てない食卓」の始め方を、食品ロス問題ジャーナリストの井出留美さんが食材ごとに解説します。
連載1回目の今回は、様々な料理に使えて私たちの食卓には欠かせない食材の代表格、「卵」です。
2021.2.24
【卵】気温10度以下の冬場なら「57日間生で」食べられる

「夏に生で食べる」前提で賞味期限が決められている
いつもの買い物で定番の卵。
買ってきて、冷蔵庫に入れて、使うときに賞味期限を確認します。
あ、過ぎていた!
そんなとき、捨てますか? それとも火を通して食べますか?
実は、卵は10度以下で保管すれば、生で57日間食べられるんです。
これは日本卵業協会の公式サイトに掲載されている、英国のハンフリー博士が実験したデータです。
気温の低い冬場(12月から3月)は、産卵後、57日以内なら、理論上は生で食べられることになります。
ただ、まれにサルモネラ菌の心配があるため、現状では、冬も夏も「産卵から1週間以内にパックし、パックしてから2週間」で賞味期限が印字されています。
産卵日から数えると、賞味期限は3週間以内。
つまり、真夏に生で食べるという前提で、一年間通して、実際よりかなり短めに賞味期限が決められているのです。
だから、印字されている賞味期限を過ぎていても、加熱調理すれば、十分に食べることができます。
そもそも賞味期限は、「おいしく食べられる期間」のことですから、期限を過ぎても即食べられなくなるわけではありません。
しかし、スーパーなどの店では賞味期限ギリギリの卵は売られていませんよね?
賞味期限の手前に棚から下げてしまうからです。
日本卵業協会によると、スーパーや食料品店などでは、賞味期限の1週間前には売り切るように管理をしているそうです。
私がフードバンク(まだ食べられるのに捨てられる運命にある食品を、必要な人へとつなぐ取り組み)で活動していたとき、協力企業の数はあまり多くありませんでしたが、商品として流通できなくなった卵を大量に寄付してくださる会社もありました。
400名ほどを対象に行う炊き出しで、ゆで卵にして配ることが多かったです。