2021.5.27
パンの大量廃棄問題。常識を打ち破って成功した、広島の「捨てないパン屋」の秘策とは?
作るパンの種類を40種から4種のみに
その後、田村さんはヨーロッパへパン作りの修行に出ます。
修業先で目の当たりにしたのは、パンが一つも捨てられていないという現実でした。
しかも、日本では1日15時間以上働いていたのに、ヨーロッパでは家族を大切にしてゆったり働き、できるパンは自分が作るものより美味しい。
帰国した田村さんはそれまでのやり方をガラリと変えました。
常時40種類以上作っていたパンは、北海道産の有機小麦を使い、日持ちするハード系4種類のみに。国産の有機小麦は、外国産小麦の4倍の値段、国内産小麦の2倍の値段ですが、日持ちしないチーズなどの副原料を減らして経営が成り立つ工夫をしました。従業員も、8人から夫婦ふたりだけに。
さらに、店を開けるのは週に3日だけにしました。定期便を送る個人客やレストランなど法人のお客がいれば、決まった数を作ればいいので捨てるのは減ります。
こうしてパンの作り方や売り方を変えることで、田村さんは「捨てないパン屋」になることができたのです。
年商は変わらず、一人あたりの労働生産性が上がり、1か月の休みをとって旅行に行くこともできるようになったそうです。
現在、「ブーランジェリー・ドリアン」は、コロナ禍を経て店舗販売をやめ、レストランと定期便の顧客だけで営業しています。
「国産有機小麦を使ったパンなんて高そう」「理念には共感しても、毎日の食卓にそんな高級そうなパンは買えない」なんて思う方がいるかもしれません。
私は田村さんのパンの定期便を頼んでいるのですが、確かに1個1,000円以上します。
ところが、パンの重さを測ってグラム単価を調べてみたところ、意外なことに、送料を含めてもスーパーで買う100円台の食パンより安かったのです!
田村さんのパンは、ずっしりと詰まって重いです。