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1年間誰よりも和牛を食べまくった肉バカが捧げる【焼ニシュラン2019】その1

☆☆☆【奇をてらうことなく王道を独走する至高の焼肉】 [くにもと 本店/新館]

ここ数年流行のインスタ映えは一切関係ない。
派手さではなく、本質を追求し続ける日本最高峰の焼肉店が浜松町にある。

仕入れる牛肉は店主が吟味を重ねた雌の黒毛和牛。
何度も通っているが、最近は田村牛が多いように感じる。

カットも最近の流れとは違う。
一切れのボリュームがあり、食べ応えが凄い。

ちょこまかした焼肉では決して味わうことの出来ない世界がそこにはある。

何よりくにもとのくにもとたる所以は、そのタレだ。
焼肉店の命ともいうべきタレはしっかりとインパクトのあるモミダレ、あっさりと絶妙な甘みと酸味が入り混じったツケダレ。
これらのバランスが他とは一線を画すハイレベルな完成度なのだ。
和牛の旨味を消し去るどころか、むしろ引き立て、霜降りも赤身もそれぞれの良さをぐっと持ち上げてくれるのだ。

くにもとでは最初に上等、飛び切り、別格の3種類の盛り合わせから選ぶことになるが、一番手頃な上等でも十分に満足できる。
肉バカも普段は毎回上等をオーダーし、特別な日には奮発して最も高級な別格をオーダーする。
その日のシチュエーションによって、どの盛り合わせを頼んでも必ず満足できるだろう。

肉バカが毎週でも食べたいと思う至高の焼肉を食べてみて欲しい。

コクのある牛肉の旨みを、極上のタレが際立たせる
コクのある牛肉の旨みを、極上のタレが際立たせる

☆☆☆【他のお店で食べれば食べるほど分かる、研ぎ澄まされた焼肉】 [ゆうじ]

渋谷の東急ハンズの裏手という立地ながら、店内は連日ホルモン好きで溢れている。

如何に仕入れに拘っているかは、運ばれてきたホルモンを見れば一目瞭然。
そんな宝石の様なホルモンは、営業前に丁寧に掃除され、一切の臭みが消えていく。

肉バカがゆうじに惹かれるのは、こんな素晴らしいホルモンだけではない。

ホルモンの部位ごとに違う食感や旨味を引き出すカット、そして優しく旨味を引き立てる見事なタレが存在する。
塩の味付けだけでも、部位ごとに全て味付けが違っていたり、同じ部位でも前回と違っていたりする。
それがブレではなく、美味しくホルモンを食べるように計算されたゆうじの真骨頂なのだ。

塩だけではなく、タレのレパートリーも多い。
甘さだけに頼るのではなく、如何に素材の味わいを引き出せるかを突き詰めたタレ。
焼肉とは何なのか?
その答えを教えてくれているようなタレがそこにある。

基本的にゆうじの予約は19時一斉開始のみ。
それ以外は予約を受け付けていないので、21時頃の2回転目も狙い目だ。

最初はアラカルトでゆうじの凄みを体感し、そこからお任せをお願いするのもオススメだ。

この世に存在するのが信じられないほど美味しいゆうじのホルモンダレ
この世に存在するのが信じられないほど美味しいゆうじのホルモンダレ

☆☆☆【行くたびに驚きがある、焼肉の可能性を広げたパイオニア】 [YORONIKU 蕃]

よろにくは東京食肉市場の老舗の仲卸である日山から月齢の長い雌牛を仕入れている。
しかし、よろにくの凄さはこれらの素材の良さだけではなく、むしろ計算し尽くされたコースにある。

今でこそ普通に見かけるようになったコース焼肉だが、よろにくがオープンする前のコース焼肉と言えば、お店側が出したい部位を盛り合わせにして、そこにキムチなどの前菜や冷麺などの〆を付けただけのセット的なものが主流であった。
そこからよろにくの出現によって、味や食感の流れを意識した、コースと呼ぶに相応しいコース焼肉がこの世に送り出されたのだ。
肉バカが初めてコース焼肉の良さを知ったのも、もちろんよろにく。

更に、よろにくでの感動を高めているのが、お任せコースの存在。
基本となる焼肉だけでなく、肉割烹的な要素をふんだんに盛り込み、目で見て楽しく、食べても昇天するハイレベルなクオリティなのだ。

妥協を一切許さない店主の追求に末に生み出される肉料理は、焼肉ではなく肉割烹というジャンルで勝負しても、おいそれと負けるものではなく、むしろ普通の肉割烹には圧勝してしまうだろう。

トラディショナルな焼肉からの脱却という点では、業界のパイオニアと言っても過言ではなく、似たようなスタイルの焼肉店のほとんどがよろにくを参考にしているように感じる。

肉割烹さながらの多彩な肉料理が織り交ぜられた至高のコース
肉割烹さながらの多彩な肉料理が織り交ぜられた至高のコース

☆☆☆【圧倒的な肉質を追求し続ける焼肉】 [焼肉 しみず]

東京の焼肉界で、圧倒的に抜きん出た肉質の良さを感じさせるのが不動前のしみず。
正肉だけでなく、タンやハラミといった(流通上)内臓に分類される部位まで圧倒的な肉質を揃えている。

店主は不器用で、ひたすらに己の信じた道を追求し続ける。
だからこそ、これだけの素材が集まるのだ。

味付けは最高の素材を邪魔しない最低限のもの。
化調に慣れ親しんだ人だと、少し物足りなく感じるようだが、噛むごとに溢れ出る本物の旨味を知ってしまうと、誰もがしみずの虜になるだろう。

2019年6月に10周年を迎え、更に進化しているのを感じる。
最近の予約の取れなさは辛いところだが、それだけしみずの凄さが世に知られてきた喜びもある。

牛肉の王様、サーロインの味付けは塩と胡椒のみ
牛肉の王様、サーロインの味付けは塩と胡椒のみ

冒頭でお伝えした通り、今回は2つ星焼肉店もここから紹介する予定だったが、あまりに長くなってしまうので、次回の肉バカ日誌で紹介したいと思う。

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小池克臣

こいけ・かつおみ●1976年、神奈川県横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。焼肉を中心にステーキやすき焼きといった牛肉料理全般を愛し、さらには和牛そのものの生産過程、加工、熟成まで踏み込んだ研究を続ける肉の求道者。著書に『No Meat,No Life.を実践する男が語る和牛の至福 肉バカ。』がある。
公式ブログ「No Meat, No Life.」→ http://d.hatena.ne.jp/BMS12/

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