2021.12.11
【中村憲剛×横田真人対談 前編】川崎フロンターレの取り組みも参考に、地域密着の新しい陸上競技クラブを作る
フロンターレの選手紹介をパクっています(笑)
横田
さきほど憲剛さんに「ゼロイチ」というありがたい言葉をいただいたんですけど、今回の大会だけじゃなくて、じつはアイデアはほかのスポーツだったり、世界の陸上大会だったり、まわりからかき集めているイメージなんですね。「0.1」をいっぱい集めて「1」にするような。あとは自分たちの伝えたいメッセージにどう乗せていくかという話。たとえばうちのクラブの選手紹介には150個もの質問に答えてもらっているんですけど、これ完全にフロンターレさんのホームページのパクリです(笑)。
中村
ありがとうございます!! フロンターレを参考にしてくれているんですね。
横田
ファンの方がその回答を見て、一つでも共感できるものがあれば、ちょっと親近感がわいたりするじゃないですか。ファンに愛されて、地域に密着できる陸上クラブを僕は目指しているので、フロンターレさんの取り組みはよく参考にさせてもらっています。
中村
いろんなアイデアを実際にカタチにすることがどれほど難しいかも、僕はフロンターレを通じて知っています。一歩踏み出すことがどれほど大変かということも。
横田
逆に言うと、中距離だからやれるのかな、と。100mや長距離で自分が立ち上げたようなチームをつくると、いろいろとまわりから言われるかもしれない。でも、中距離はそれこそ僕が44年ぶりに800mでオリンピックに出て、なかなか人材が(日本の陸上界に)いない。物事は表裏一体だと僕は思っていて、(中距離の)市場がないから好き勝手にやらせてもらえるし、そこで市場をつくったらブルーオーシャンになると思っていますから。フロンターレだって、最初から市場があったわけじゃないですよね?
中村
いまはチケットがなかなか取れないようなクラブになってきましたけど、僕が入団したころ(2003年)の等々力競技場は日によっては2階席が閉まることもあるくらい、ガラガラでした。自分たちのほうからお客さんに近づいていかないとスタジアムに来てもらえない。だからまずは知ってもらうことが必要でしたね。
いくつかのプロスポーツ団体が離れたことで、川崎はスポーツが根づかない街とも言われていて、逆にそれがフロンターレのモチベーションにもなった。どんどん地域に出ていって一緒に何かやるっていうのは、どのクラブもそうだと勝手に思っていたんですけど、ここまでやるのはフロンターレくらいだって後から聞きました(笑)。
横田
地域密着感がすごいですよね。
中村
年明け一発目のイベントが川崎大師での必勝祈願と、その後に選手が分かれて市内の商店街回りなんですね。新人も、移籍してきた選手も、外国籍選手も全員参加で。自分が所属するチームの地元商店街を回ることで、選手たちは誰に支えてもらっているかをその年最初のイベントでしっかりと体感できるんです。クラブのサポートショップになると選手がお店まで来るから、ほかのお店も「うちもサポートショップになろうかな」となってくるんです。