2022.12.28
冬の手荒れとタイツに浮かぶ謎の筋
家で生き物を飼っていると、魚類は別にして、特に毛の生えているものは、やたらと手で触ってしまう。私がそのクリームを塗って、ネコの体を触ろうとすると、一瞬、
「んっ!」
という表情になって、ちょっと退き、今度はゆっくりと手の匂いを嗅ぐ。そしてまさに、
「わっ、いやっ」
と顔をしかめた後、私の顔を見ながら、
「いやーっ!」
と力一杯鳴くのだ。
この「いやーっ」なのだが、あるとき、動物を飼った経験がない人に、
「この鳴き方は創作ですよね」
といわれた。飼った人ならわかると思うけれど、イヌやネコは、「ワン」や「ニャー」しかいわないわけではなく、微妙な声で鳴いたり、もごもごと話したりということはいくらでもある。そのときも本当にいやそうに、その発音で、
「いやーっ」
と鳴いたのだった。
「あらー、これきらい? 困ったわねえ」
とつぶやいても、相手は、ふんと踵を返して行ってしまった。
寝る前ならいいかと手に塗っていたら、ネコが私の手を舐めようと近寄ってきて、指に顔を近づけたとたん、
「うわっ」
と顔をしかめて、急ぎ足で自分のベッドに戻っていってしまったこともあった。ネコが舐めてくれるはずだったのにいやがられて、とても悲しかった。手の荒れとネコとの間でしばし悩んだけれど、もちろんネコを選んだ。
私の手に効果があったハンドクリームには、手荒れにとても効く特殊なケミカルな成分が入っていたのだろう。うちのネコは、食事も含めて、オーガニック嗜好だった。彼女が気に入って、手を舐めてくれるハンドクリームは、あまり効果がみられず、私の手はずっと荒れたままだった。そのうえざらざらしているネコの舌で、荒れた手を舐められるのは辛かったが、それでもうれしさのほうが勝っていたので、じっと耐えていた。