よみタイ

新しいパソコンを接続する

 そこでまだ今のパソコンが動いているうちに、現在の接続状況を調べてみた。するとインターネット接続なし、ブロードバンド接続4とある。
「インターネット接続がない? ブロードバンド接続? 何だそりゃ」
理屈はまったくわからないが、まあそれにによってインターネットができているらしい。またインターネットに接続できない理由として、IPアドレスというものが、認識されないと、接続がスムーズにいかないらしい。使っているパソコンのIPアドレスの調べ方が書いてあったのでやってみたら、そこに表示してあった、「169・254・~」という番号が私のパソコンと一致していた。そうか、このせいでスムーズに接続できなくなっていたのだなとはわかったが、それからどうしていいのかわからない。ところが新しく設定できるとあったので、やってみたが、「インターネットに接続されていません」と表示が出て、だめだった。とにかくブロードバンド接続ということだけはわかったので、Windows10のパソコンを接続するときに使おうと、ブロードバンド接続をする方法の項目をプリントアウトして、このパソコンが使えなくなったときのために取っておいた。
 それから毎日、大きな音をたてるパソコンを使っていたのだが、突然、「診断復旧ツール」が終了してしまったのである。
「終わった……」
 実はWindows10のパソコンに替えるときには、パソコンのメーカーに頼んで、設定の出張サポートを頼もうと思っていた。しかしコロナのせいで、それを頼むのも気が引けるし、たしか接続に関しては、メーカーはノータッチで、接続できているのが前提という断り書きがあったような記憶があった。
「どうするんだ、いったい」
 しばらく診断復旧ツールが表示されない画面を見ながらがっくりしていたが、しかしこのまま放置するわけにはいかない。仕事をしなくてはならないのである。
 パソコンを原稿を書くために使いはじめたのは、比較的早かった。Windows95から使っているけれど、細かいことは一切、わからず、知ろうともしなかった。そのツケがいま回ってきたのである。
「うーん」
 うなっても現状は変わらない。もしかして、たまたまだったのかなと、期待して診断復旧ツールを画面に出す手順を繰り返しても、表示されない。しかし仕事を休むわけにはいかないので、どうしてもブロードバンドに接続しなくてはならない。接続設定など、あれやこれやをクリックしまくっていると、ISPからのユーザー名、パスワードを入力せよという画面が出てきた。
「ISPって何?」
 超能力があるとかないとかいうときの実験に使われる、ESPカードは知っているが、これははじめて知った言葉だった。
「ユーザー名とパスワードねえ……」
 そうではないだろうとは想像はしたが、とりあえずユーザー名に自分の名前を漢字やら英字で打ち込んでみたが次の画面に移らない。そりゃそうだろうなと納得しつつ、誰かからもらったユーザーやパスワードってあったかなあと考えていたら、
「もしかしたらプロバイダーからもらった紙に書いてあった、あれかしら」
 と思い当たった。そこで引き出しの中から書類を取りだし、それをそこに入力してみると、なんと、接続できたではないかっ。
「私、えらい!」
 自分で自分を褒めてやった。そしてそのときに、謎のISPがインターネットサービスプロバイダーだとわかったのである。
「略さないでちゃんと書いてくれれば、もっと早く物事は収まったのに」

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『しあわせの輪 れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『小福ときどき災難』『今日は、これをしました』『スマホになじんでおりません』『たりる生活』『老いとお金』『こんな感じで書いてます』『捨てたい人捨てたくない人』『老いてお茶を習う』『六十路通過道中』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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