「しない。」生活のなかだからこそ、手に入れるもの、するべきことは
試行錯誤を繰り返し、日々吟味している群ようこ氏。
そんな著者の「しました、食べました、読みました、聴きました、着ました」
など、日常で「したこと」をめぐるエッセイです。
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2021.3.17
三十数年ぶりに新聞をとる
今日は、これをしました 第13回

久しぶりに新聞をとるようになった。三十数年ぶりになるだろうか。新聞の連載があったときは、掲載紙として送られてくるので、ニュースを知るにはやや遅くはなるとはいえ、それで済ませていた。連載が終わると当然、送られてこなくなるのだけれど、それでも私の生活には問題はなかった。
新聞の勧誘の人が来ると、
「インターネットニュースで見るから、それで十分です」
と断り続けていた。そのうち勧誘の人も来なくなったので、ニュースを知るのはインターネットが主で、他には仕事中に聴いているラジオか、一日、二時間程度観るテレビになった。
それで十分だと思っていたのだが、ラジオはともかく、最近のテレビのニュースでは、私が知りたいと思うような事実は放送されず、報道姿勢を信用できないと感じるようになり、それならば自分でインターネットで情報を探して、より真実に近いものを知ったほうがいいと考えたのだが、ネット上にはたくさんの情報があふれすぎていて、拾いきれなくなっている。また、インターネットで知るニュースは、自分がそのときに興味がある内容のものしか検索しないので、そのときに頭の中になく、興味がない事柄には触れなくなるのだ。
世の中に起きている事柄すべてを知る必要などないし、そんなことはとてもじゃないけどできない。昔は一人で新聞を何紙もとっていて、それぞれの政治的志向や、内容を比較している人もいたが、私には無理だ。しかし自分が興味がある事柄だけを、検索し続けていると、相当、偏りそうだし、別のジャンルの事柄に触れる機会があってもいいのではないかと考えたのだった。