よみタイ

韓国フードのブームもBTSきっかけ!? 「推しと同じものを食べたい」気持ちは世界共通 【韓国トレンドの裏事情vol.5  前編】

ニューヨークを拠点に、15年以上にもわたってファッション、ビューティーブランドのブランディングや広告キャンペーンのディレクションに携ってきたジョエル・キンベック氏。
日本人の母親とアメリカ生まれの韓国人の父親を持ち、日本、アメリカ、韓国を行き来しながら各国の文化に触れて育ったバックボーンと、仕事での経験をベースに、誰もが知っている韓国トレンドを深堀り解説します。

前回は街でも圧倒的に持っている人が増えた、韓国ブランドのバッグについて。今回はカップ麺やフライドチキンなどが世界中の支持を受けている、韓国フードについて分析。

構成/藤田麗子

記事が続きます

ニューヨークには、マンハッタンの中心部にコリアタウンがあります。現地で暮らすアジア系の人々は以前からここで韓国料理を楽しんでいましたが、中華料理や寿司などの日本料理に比べると、幅広い人種に広く親しまれている料理というわけではありませんでした。

ところが近年は雰囲気ががらりと変わり、アメリカでも「Kフード」がすっかりおなじみの料理になっています。

このブームには、大きく二つの流れがあります。一つは、スーパーで買えるインスタント麺やキンパといった大衆食の定着。もう一つは、ミシュランの星を獲得するようなファインダイニングの増加です。まったく正反対に見える2つの方向へ、韓国料理はなぜここまで広がりを見せているのでしょうか。

韓国のエンタメコンテンツがKフードの入口に

まず大きいのは、やはり韓国のエンターテインメントコンテンツの影響です。韓国ドラマや韓国映画、そしてK-POPが韓国料理への入り口になっているのです。
たとえば、BTSは、音楽活動だけでなく、YouTubeなどを通じてメンバーの素顔や舞台裏を見せるコンテンツも積極的に発信してきました。こうしたコンテンツを通して、ファンがメンバーをより身近に感じられることも、世界的な人気を支えた要素の一つといわれています。

BTSのデビュー初期からオンラインで無料配信されているバラエティ番組「Run BTS!」では、メンバーがさまざまなゲームやミッションに挑戦。料理企画もたびたび登場し、Kフードが世界に知られるきっかけにもなりました。
2023年には、メンバーのジョングクがファンコミュニティプラットフォームでのライブ配信中にフライドチキンをおいしそうに食べる“モッパン”(食事している様子を撮影した動画)を披露。このとき彼が食べていた新興チキンブランド「60鶏チキン」のクククチキンがBTSファンの間で一気に人気を集め、宅配デリバリーサイトへの注文が殺到しました。
他にも、オンラインライブ中にメンバーがフライドチキンやインスタント麺をおいしそうに食べるシーンに注目が集まり、多くのファンに「同じ料理を食べてみたい」という気持ちを起こさせたのです。

BTSが食べたものが世界的にヒット!? (写真は2019年アメリカのラジオ番組「The Morning Mash Up」の収録でのワンシーン) Photo by Astrid Stawiarz/Getty Images for SiriusXM
BTSが食べたものが世界的にヒット!? (写真は2019年アメリカのラジオ番組「The Morning Mash Up」の収録でのワンシーン) Photo by Astrid Stawiarz/Getty Images for SiriusXM

フライドチキンは、アメリカでもとても人気の高いメニューです。韓国のフライドチキンブランドは2007年頃からアメリカに進出しており、ニューヨーク・タイムズで「薄くてサクサクの衣や、甘辛いタレ」といったアメリカのフライドチキンとは異なる魅力が紹介されるなど、新たなブームの兆しを見せていました。ここに韓国コンテンツを通じた関心の高まりも加わり、より多くの人々がコリアタウンを訪れて韓国式のフライドチキンを楽しむようになったのです。

また、2020年のアカデミー賞で4冠を獲得した映画『パラサイト 半地下の家族』に登場した「チャパグリ」は、世界中で大きな話題になりました。インスタント麺の韓国式ジャージャー麺「チャパゲティ」と韓国式うどん「ノグリ」を混ぜ、高級牛肉をのせるというアレンジレシピです。英語字幕では、ラーメン(Ramen)とうどん(Udon)を組み合わせた「Ram-don(ラムドン)」という名前に置き換えられ、アメリカでもその名が広まっていきました。

Netflixアニメ『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』にもキンパやカップラーメン、冷麺やソルロンタンなど、さまざまなKフードが登場し、韓国の食文化を自然に伝える役割を果たしています。

「Kフードを買える場所」の増加

もう一つは、実際に韓国料理を体験できる場所が拡大したこと。その代表格といえるのが、アジア系アメリカ人向けのスーパーマーケットチェーン「Hマート」です。
Hマートには韓国をはじめ、日本や中国、東南アジアといったアジア系の食品が集まっています。僕が子どもの頃は、チャイナタウンなどにある小さなスーパーというイメージでしたが、現在ではアメリカとカナダで100を超える店舗とオンラインストアを展開する大型スーパーマーケットチェーンへと成長しています。
こうして韓国食品を買える環境が整ったことで、アメリカの消費者が普通のスーパーに行く感覚で「ちょっとめずらしいものを試してみたい」と気軽に立ち寄れるようになりました。韓国のインスタント麺がアメリカでも身近な存在になり、2020年にはニューヨーク・タイムズのレビューサイトWirecutterが選ぶ「世界最高のインスタントラーメン」で辛ラーメンブラックが1位に輝きました。

記事が続きます

1 2

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Facebookアカウント
  • よみタイX公式アカウント

関連記事

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

ジョエル・キンベック(JOEL KIMBECK)

 英ゴールドスミス・カレッジの大学院でメディアを専攻。広告企画会社勤務を経て2010年に独立し、ブランディングエージェンシー「STUDIO HANSOME」を設立する。ニューヨークを拠点に、ソウル、東京、パリ、ミラノを行き来してファッション、ビューティー、ライフスタイルのブランディングを手がけるクリエイティブ・ディレクター。
 LVMHグループ傘下のブランドをはじめ、モスキーノ、VERA WANG、メゾンキツネ、ラフシモンズ、ロベルトカヴァリ、TUMI、カルバン・クラインなどのファッションブランド、ロレアルグループ傘下やアモーレパシフィック傘下のビューティーブランドにおいて、ブランディング全般を担ってきた。 
 韓国の『W』『VOGUE』『GQ』、『月刊デザイン』『東亜日報』『週刊東亜』など多くの媒体でコラムを執筆中。著書に『ファッションミューズ』(2016年)、『FRESHNESS CODE』(2021年)がある。韓国人デザイナーの海外進出を支援する韓国政府のプロジェクト「コンセプトコリア」のコンサルタントとしても活躍。
@studiohandsome
https://www.studiohandsome.com/


[週間ランキング] 今読まれているホットな記事