よみタイ

カニより出でてカニよりカニカニしいカニカマ

 水産加工品の出世頭は、明太子とカニカマでしょう。。
 明太子は、〔ふくや〕の創業者・川原俊夫氏が製法を公開したことで、1960年代に多くの製造者が参入しました。その後の新幹線開通もあって、博多土産としてまずはブレイクしたそうです。ただしその時点では、あくまで珍味。どちらかというと好事家のための特殊な食べ物でした。しかしその後着実にポピュラリティを獲得し、1980年代以降は、スーパーにも普通に置かれるようになりました。その後、ライバルというか兄弟というか、たらこを人気の上で逆転していった様子は、一明太子好きとして肌で感じてきました。
 明太子はパスタソースやスナック菓子などの加工食品原料という形でも家庭に入り込んできています。2007年には、加工用の出荷額がお土産用を上回ったのだとか。皆さんの中にも、明太子を使った自作レパートリーのある方は、きっとたくさんいるのではないでしょうか。僕は「しらたき明太バター」が好きです。よく考えたらこれも、元はたらこを使う料理だったはずです。
 カニカマは1972年に石川県七尾市の水産加工メーカー〔スギヨ〕が開発しました。そしてそこからの進化がすごいですね。どんどん本物のカニに近づき、もちろんそれに伴って販売数も伸びていきました。現在では、ほぼカニと同じであると謳い、カニ酢までついている商品もあります。
 個人的にカニカマに関しては、ちょっとした不満もあります。それはおいしすぎるということです。おいしいのはいいことですが、おいしすぎると逆にマズく感じられることもある。もちろん感じ方は人それぞれでしょうが、僕にとってはカニカマがまさにそれなのです。形状や食感がこれほどまでにリアルになったのだから、もうちょっとおいしさを控えめにしてくれたらよりリアルなカニに近づき、そうなれば僕はもっと頻繁に購入するし、しかも一度にたくさん食べるでしょう。
 これに関してはある時、開発者への取材を目にしたことがありました。現代のカニカマは、本物のカニのうま味成分を化学的に解析して、それを元に味が作られるそうです。凄いテクノロジーですね。ところが、あくまでその開発者氏の言葉を借りるなら「そのまま再現するだけではイマイチおいしくない」のだとか。だから、そのさまざまなうま味成分を全てブーストして、「本物よりおいしく」作り上げているのだそうです。僕はそれを聞いた瞬間、やはりそうだったのかと納得するとともに、余計なことを!とも思ってしまいました。皆さんはどう感じられるでしょうか?
 これはなかなか哲学的な話であり、また技術というよりは思想の話なのかもしれません。カニカマの話に限らず、日本のメーカーは「普通ではダメだ。普通よりわかりやすく優れていなければいけない」という思想が極端に強いように感じるのです。そしてそのことは、当然ながら良くも悪くも、家庭料理にも大きな影響を与えていそうです。

イラスト:森優
イラスト:森優

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次回は9/25(金)公開予定です。

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稲田俊輔

イナダシュンスケ
料理人/飲食店プロデュ―サー/「エリックサウス」総料理長。
鹿児島県生まれ。京都大学卒業後、飲料メーカー勤務を経て円相フードサービスの設立に参加。
2011年、東京駅八重洲地下街に南インド料理店「エリックサウス」を開店。南インド料理とミールスブームの火付け役となる。
SNSで情報を発信し、レシピ本、エッセイ、小説、新書と多岐にわたる執筆活動で知られる。
レシピ本『南インド料理店総料理長が教える だいたい15分! 本格インドカレー』『ミニマル料理』シリーズ、エッセイ『おいしいもので できている』『食いしん坊のお悩み相談』『異国の味』『東西の味』、小説『キッチンが呼んでる!』、新書『お客さん物語』『料理人という仕事』『食の本 ある料理人の読書録』など著書多数。

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