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庵野秀明・実写映画初監督作『ラブ&ポップ』から読み解く、「名前」に託されたもの

庵野秀明の華麗なる経歴

 芸術文化に関わるこれまでの功績が評価され、庵野秀明は今年の春に紫綬褒章を受章した。言わばその活動に対して国家のお墨付きを得たわけである。「エヴァ」で一世を風靡した庵野の作品は従来の「オタク」層を超えて受容されるようになる。「エヴァ」の新劇場版は毎回前作の興行収入を上回っていき、先ほど述べたように、ついに完結編の『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』で100億円の大台を突破した。

 庵野秀明は、前作『エヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(2012年)と『シン・エヴァ』の間に、これまた大ヒットを記録した『シン・ゴジラ』(2016年、興行収入82.5億円)の総監督を務めている。約1ヶ月遅れで公開された『君の名は。』(新海誠監督、興行収入250億円)の勢いが(文字通り)桁違いだったために世間的にはやや霞んでいたかもしれないが、この数字は東宝が製作した「ゴジラ」映画29本のなかでぶっちぎりのトップである。

 また、総監修・企画・脚本などの立場で参加した今年公開の『シン・ウルトラマン』(樋口真嗣監督)も現在までに40億円を超える興行収入を叩き出している。「エヴァ」の「旧劇場版」と「新劇場版」4部作、『シン・ゴジラ』、『シン・ウルトラマン』と、監督あるいは主要なスタッフとして携わってきた映画がことごとく大ヒットしているのである。今や庵野秀明は国内有数のヒット・メーカーと呼んで差し支えない。来年2023年には『シン・仮面ライダー』の公開が控えている。内容への期待はもちろん、どこまで興行成績を伸ばせるかも楽しみだ。

 アニメーター、あるいはフィルムメーカーとしての庵野秀明の仕事は多岐にわたっており、「エヴァ」以前にも注目すべき多くの作品に携わっている。いまや国民的なクリエイターとなった庵野秀明のキャリアを押さえておくことは、これまでの彼の作品や、今後の作品を鑑賞するに当たって有用だろう。以下に続く文章は、「庵野秀明初級編」として履修していただければ幸いである。彼が関わってきた「大物」たちを知っておくだけでも、鑑賞の幅が広がることと思う。

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伊藤弘了

いとう・ひろのり 映画研究者=批評家。熊本大学大学院人文社会科学研究部准教授。1988年、愛知県豊橋市生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒。京都大大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学。著書に『仕事と人生に効く教養としての映画』(PHP研究所)がある。

Twitter @hitoh21

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