2022.8.5
夫婦間の嫉妬の火種は「浮気」から「キャリア」へ? 第2回 男高女低神話のゆらぎ
第2回 男高女低神話の崩壊

昨今の夫婦の間では、夫が妻の、もしくは妻が夫のキャリアや才能に嫉妬するという現象が、見られるのだそうです。
それは夫婦に限らず、恋人同士でも同様のようですが、カップルの片方が良い会社に転職したとか、昇進したとか、資格試験に合格したといった時、もう片方は「よかったね」と言いつつも心の中にはモヤモヤが広がっていき、
「なんでこの人の方が自分よりも……」
と嫉妬心を募らせるのだそう。
その昔は夫婦間での嫉妬といったら、浮気が絡んだものがほとんどでした。別の異性がカップルの間に割り込んできそうになった時、ジェラシーの炎が燃え立ったのです。
多くの妻が夫の経済力に頼って生きていた時代、夫が外に女を作るということは、二重の意味で既得権益の侵害となりました。愛情を独占できないことも悔しいし、
「浮気相手にそんな高いプレゼントを買うお金があるならその分を……」
というように、経済的な問題も絡んできたのです。
もちろん今も、その手の嫉妬心は存在し続けています。しかし時代の変化に伴い妻が経済力を持つようになったことによって、嫉妬の火種は、浮気問題だけではなくなってきたようなのでした。
昔の妻達は、夫のキャリアが上がることに、純粋な喜びを感じていたはずです。振り返ればバブルの時代は、「三高」という言葉が流行ったもの。学歴、収入、身長という三条件がそれぞれ高い男性と結婚したい、という女性の思惑をその言葉は示したのであり、「あまりに物質的」と、三高狙いの女性達に対する批判の声も上がりました。
三高とは、「三つの条件が、高ければ高いほど良い」という意であると同時に、そこには「三つの条件が、自分より少しでも高い男性が良い」という感覚も含まれていました。様々な条件が男高女低である方が、日本のカップルは安定することを当時の女性達はよく知っていたのであり、結婚相手には「高」男性を選んで自分を「低」の位置に置き続けることによって、安心できる未来を手にしようとしたのです。
逆もまた真で、この頃の男性達は、色々な部分で「自分よりちょっと『低』」の女性を求めました。男が主で女が従、という長い歴史を持つ我が国に生きる身としては、自分よりも女性の方が「高」という状態に置かれると、甚だ不安に。学歴も、年収も、身長も、そして年齢も、自分よりちょっと低い女性と共にいる時、彼らは安心することができたのです。
例外だったのは、容貌のレベルです。男性は、容貌ばかりは、自分よりも高いレベルの女性を求めるケースが多かったもの。特に、収入は高いが容貌は今ひとつという男性は、容貌がうんと高レベルの妻を得ることによって、自身の収入や能力が伊達ではないことを周知しようとする傾向がありました。
しかし、容貌以外の部分で、常に男の方が女よりも全て「高」の状態であり続けるのは、現実的には不可能です。女も男と同じ人間なので、どうしても、女の方が男より「高」とか「上」になってしまう時もあるのですから。
そんな時のために日本女性が身につけた技術が、「男を立てる」というものでした。明らかに男性よりも女性の方が能力が高かったり知識が豊富だったりしても、できないふり、知らないふりをして、男性に恥をかかせないようにするのが、「男を立てる」。それは、人工的に「男高女低」状態をキープするためのテクニックです。