2023.3.16
猫沢家は毎日が世紀末! 第12回 地獄のヴィザ更新から持ち上がる結婚話〜父のハルマゲドン事件
「結婚などしている場合ではないのですよ!」
食事があらかた終わり、ついに両家の家長による結婚申し出の時間となった。彼のお父さんは、深々と首を垂れて「エミさんをマッテオのお嫁さんとして、来年の春頃、お迎えしたい所存でございます」と父に言った。彼のお父さんに向かって私は頭を下げたまま、当然父も、どうぞよろしくお願いします……と受けると思い、次の言葉を待っていた。ところが何も聞こえてこない。バッと顔をあげて父を見ると、アゴに手をやって考え込んでいるではないか。そして、おもむろに彼のお父さんの顔へ向き直ると、
「ひとつ、大きな問題がありましてな。来年は1999年。つまり、ノストラダムスの大予言によるところのハルマゲドンが起きる年なんです。空から恐怖の大王が降りて来ちゃ、結婚などしている場合ではないのですよ!」
はぁ?
落ちたアゴが戻らぬまま、あんぐりと口を開けて一瞬放心。いやいやそんな場合じゃない。〝母! フォローしてくれ!〟という私の心の叫びも虚しく、最後の頼みの綱である母が、さらなる追い討ちをかけた。
「そうなんですよ〜……やっぱりねえ、ハルマゲドンじゃ太刀打ちできませんものね〜ほほほほほ」
ブルータス(母)よ、おまえもか。
終わったー……この結婚、破談けって――――い。
衝撃でその後の記憶が曖昧なのだが、おそらく彼のお母さんがなんとかとりなして、来年は確かに性急すぎるかもしれないから、再来年をめどに進めていきましょうということで、その場はひとまず収まったような。まさにハルマゲドン。ってか父、アンタが恐怖の大王だよ。ハルマゲドンじゃなくてハゲヅラドンだけどな。
