よみタイ

女ひとり+だだっ広い部屋+虫の声=孤独?

バツイチ、シングル子なし、女40代、フリーランス。 編集者、ライターとして、公私ともに忙しく過ごしてきた。 それは楽しく刺激の多い日々……充実した毎日だと思う。 しかし。 このまま隣室との交流も薄い都会のマンションで、 これから私はどう生きるのか、そして、どう死ぬのか。 今の自分に必要なのは、地域コミュニティなのではないか……。 東京生まれ東京育ちが地方移住を思い立ち、鹿児島へ。 女の後半人生を掘り下げる、移住体験実録進行エッセイ。

生の情報は現地で暮らす人々から得るに限る

 機内で泥のように眠って、長崎空港に到着したのは19時35分。場内は閑散としていて、日はとっぷり暮れていました。
 夕食を簡単に済ませ、タクシーで5分ほどの小さな旅館へと向かいます。時間が時間で、この日はただ寝るだけだったので、できるだけ空港から近くて格安の宿を取りました。空港でレンタカーを借りて、雲仙から霧島まで走らせるという手段もありましたが、今の運転技術に命を預けるなんて到底考えられません。
 着くと、優しそうな女将さんが迎えてくれて、翌日の予定を聞かれました。雲仙に行くと答えると、バスが減便しているから注意したほうがいいとのこと。乗り継ぎがうまくいかなければレストランの予約に間に合わないので、危機一髪で難を逃れました。

 公共交通機関の旅、しかも明後日の午前中には必ず霧島の新居に到着していなければなりません。とっとと免許を取っておけばよかったのに、本当の必要に迫られない限り腰をあげない自分を呪います。
 僻地を旅するとわかりますが、ネットに掲載されていない情報はそこら中にあって、現地の観光案内所や、地元の人からの話がもっとも信頼のおける情報です。
 以前、青森県の大間に行こうとGoogle Mapで調べたところ、一度北海道に渡ってフェリーで戻ってくるルートを提示されました。んなわけあるかと地元の情報を探っていくと、下北駅からバスが出ていて、地元のバス会社のホームページにpdfの時刻表がアップされていました。つい数年前ですが、当時は再生紙に印刷された時刻表をスキャンしたものが貼られていたのを覚えています。
 かくして、極寒のなか、時刻表とにらめっこしながら途中で下車して温泉を挟み、下北駅から3時間以上かけて大間へとたどり着きました。時間に雁字搦めにされながらも、どうにか渡島半島のフォルムを肉眼で確認し、念願の鮪にありつくことができたのでした。
 こんなことはしょっちゅうで、うっかり時間を見誤って駅で虚無の1時間を過ごしたり、接続がうまくいかず空いた3時間に温泉を無理やりねじ込んだり、免許がない旅は要らぬトラブルも多くありました。
 今までの旅にすべて車があったらと思うと、悔やまれてなりません。自分を納得させるためにも、助手席に慣れ過ぎたということにしておきたいと思います。

 旅館の部屋は6畳一間の和室で、窓を開けると目の前に自動車教習所のコースが広がっていました。つい数か月前の淡い記憶が蘇ります。
 バスの時刻表とレストランの予約時間を照らし合わせて、ルートと起床時間を特定し、まだまだ足りない睡眠時間を埋めるように、この日は早々に眠りにつきました。

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藤原綾

1978年東京生まれ。編集者・ライター。早稲田大学政治経済学部卒業後、某大手生命保険会社に就職するも、大企業の闇に触れて逃げるように宝島社に転職。ファッション誌の編集を経て2007年に独立し、ファッション、美容、ライフスタイル、アウトドア、文芸、ノンフィクション、写真集、機関紙……と、節操なく仕事を受けてきた結果、幅広い業界で編集・執筆活動を行うことに。近年もブランドムック『ANNA SUI COLLECTION BOOK』、雑誌『小学一年生』、漫画『ごろごろにゃんすけ』(村里つむぎ)、書籍『つくるひとびと』(秋山竜次/ロバート)、小説『海の怪』(鈴木光司)、カタログ『LAZY SUSAN』など、極端なノンジャンルで活動中。

インスタグラム @id_aya

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