2024.4.28
44年間、奥二重で生きてきたおじさんが、二重まぶたに挑戦してみたら
前回は人生で初めて花粉症が発症してしまい、その対策として経験した鼻うがいについて、でした。
今回も人生初、が続きます。突然、二重まぶたに変わったら?
(イラスト/山田参助)
第43回 二重まぶた狂騒曲
おじさんだけど、二重まぶたになってみたい。春の訪れとともに、そんなことをふと思ったのだ。
一重だろうが二重だろうが関係ない。人生で大事なことはそんなことじゃない。今までそう思って生きてきた。
「くっきり二重になりたいの!」とアイメイクに奮闘する女性や、果ては整形手術にまで手を出す人たちを、どこか冷めた目で眺めていた。
そんな私が、四十代にして美容の楽しさを知った。起き抜けの肌ツヤが良いだけで、一日中ずっと気分が良くなるという喜びを知った。そう、結局のところ、自分のご機嫌を取れるのは自分しかいない。自己肯定感を高めるために必要な手段、それが美容なのである。
美容初心者の私でも断言できる。たった一本、シワが増えたり減ったりするだけで人生は大きく変わるのだ。
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ということで、改めて自分のまぶたを観察してみる。自分のまぶたなのに、今まで四十四年間何も気にせずに過ごしてきた。ごめんよ、私のまぶたさん。
いわゆる奥二重というやつなのだが、まぶたが厚いせいで非常に腫れぼったく、ほぼ一重まぶたに見える。自分のまぶたが嫌いで嫌いで仕方ないというような切実な想いはないのだが、一度ぐらい二重まぶたになってみるのも悪くはない。
私の体における未開拓の地、いわゆるブルーオーシャンであるまぶた。二重まぶたになることで、私の毎日にどんな変化があるんだろう。それが楽しみで仕方ない。
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アイメイクに関する知識が全くないので、同棲中の恋人に付き合ってもらい、近所のドラッグストアと百均ショップで二重まぶた用のメイク用品を購入。アイテープを数種類、遊びのつもりでつけまつげ、そしてコスメ商品口コミランキング1位の「ORISHIKI(オリシキ)」というアイリッドスキンフィルムもGETした。美容を学び出して分かったこと、それは意外と口コミは役に立つということである。私、美容のおかげで、他人を信じることができるようになりました。
アイメイクをする前に、まずはしっかりと洗顔、そして眉毛を整える。眉毛ケアに若干の不安を残す私は、ここでも彼女の力を借りることに。自分が苦手なことに関しては、素直に他人を頼れるようになったのも、美容を通じて学んだことだ。彼女の助言に従って自分で眉を整えてみるも、しっくりこない出来上がりに。畜生、まだまだ修行が必要だ。
さて、準備も万端というところで、まずはお手軽なアイテープから試してみる。その名の通り、まぶたに貼りつけることで二重のラインを作るというものである。私のようなアイメイク初心者にとって、こういう図画工作のような感覚で使えるものは実にありがたい。
自分の理想とする二重のラインに沿ってテープを貼れと説明書きがされているが、そのラインの基準がわからない。目頭の赤い所を隠す蒙古襞が有るか無いか、まぶたの厚み、目の幅などで理想のラインが変わってくるそうだ。目尻に行くに従って二重が徐々に広がっていく末広型に、同じ幅を保ったままの平行型などがあるらしい。
自分の体に蒙古襞という面白い名前の部位があること、雲竜型や不知火型といった相撲の土俵入りのように、眉毛のラインにもさまざまな型があることを知れて非常に楽しい。
実は今まで、映画『Shall we ダンス?』の良さが全然わからなかったのだが、美容と健康に目覚めてから再見したところ、社交ダンスという未知の世界に触れ、人生が俄かに華やいでいく、役所広司演じるしがないサラリーマンの姿を見ながら「わかる! わかるぞ!」と自然と涙を流していた。知らないものを知っていく過程って本当に面白い。『ロボコップ』も好きだし『Shall we ダンス?』も好き。好きなものが多い方が人生は楽しい。
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彼女に意見を求めたところ、まぶたが厚いので平行型は難しいかもねとのこと、そこで今回は末広型に挑戦してみる。プッシャーと呼ばれる道具を使い、自分のまぶたをツンツンツンツンと押し上げてラインをつける。理想の場所を見つけたら、それに合わせてアイテープを貼り付けた後、プッシャーでテープをなじませて出来上がり。
プラモデルを作るような簡単な工程で、私の目は綺麗な二重まぶたへと変貌を遂げた。今まで隠れていた奥二重のラインがこんにちは。ラインがくっきりとしたことで目の印象が強まっているような気がする。なんだか自分の目じゃないみたいで違和感も強いが、気分は上々だ。
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