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ダルビッシュ有投手も愛用。自宅で簡単にできる「セルフお灸」に挑戦してみた

爪切男、四十にして惑う?
ドラマ化もされた『死にたい夜にかぎって』で鮮烈デビュー。作家としての夢をかなえた著者が、いま思うのは「いい感じのおじさん」になりたいということ。これまでまったくその分野には興味がなかったのに、ひょんなことから健康と美容に目覚め……。

前回は手軽にできる少年期の得意種目、「縄跳び」をスタートしてみた著者。
今回は、「火」を使ったメジャーな健康法である「お灸」に挑戦してみました。
(イラスト/山田参助)

第33回 light on my fire~お灸に火を点けて~

 子供の頃、〝100円ライターの火〟が生きる支えだった。貧しい家庭に育ち、親父からは過剰なスパルタ教育を受け、甘えさせてくれるはずの母親は三歳の私を置いて家を出ていった。
 あまりにも孤独な日々を生き抜くため、幼き子供には、何かひとつでも心の拠り所が必要だった。私にとってのそれが〝100円ライターの火〟だったのだ。

「玩具の代わりにでもして遊べえ」と親父から渡された使い古しの100円ライター。カチッカチッとスイッチを押すだけで、オレンジ色の火がボウッと燃え上がる。まるで自分が魔法使いにでもなったみたいだ。右に左にライターを動かしてみる。ゆらゆらりと揺らめく火のなんと美しいことか。切望していた心地よい人のぬくもりとはまったくの別物だったが、神秘的かつ猛々しい火の魅力は私の傷ついた心をじんわりと癒してくれた。火を見ているだけで私は幸せだった。まさに希望の灯である。

 歳を重ねるにつれ、信仰にも近かった火への憧れも徐々に薄れていった。とはいえ、煙草を嗜むようになってからは、ニコチンを摂取するためというよりは、ライターの火を愛でるために煙草を吸っていた気がする。
 焚火が燃えるだけの映像を撮影したDVDがヒーリングソフトとして巷で大人気というのも頷ける。なんとも説明しがたい魅力、不思議な癒しの効果を火は持っている。

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 今回は、そんな火を使った健康法を試してみようと思う。それは「お灸」である。かのダルビッシュ有投手も登板前には必ずお灸を使用しているなど、さまざまなスポーツ選手がお灸を愛用しているらしい。
 お灸の歴史は非常に古く、今から二、三千年以上も前から中国では医術として用いられていたそうだ。人間の体に無数に存在するツボにピンポイントに熱を与えることで、冷え性、肩こり、むくみ、内臓疾患といった体の不調を緩和する働きがあるという。
 背中や肩にこんもりと盛ったもぐさ(乾燥させたよもぎの葉)に火を点けて……という針鍼灸院で受けられる本格的なものではなく、自宅で簡単にできる「セルフお灸」に今回は挑戦してみる。

 セルフお灸の代名詞として有名なのは、誰でも一度ぐらいはその名を聞いたことがあるであろう「せんねん灸」シリーズである。
 円い台座の上に円柱型に巻かれたもぐさが立っており、それに火をつけて使用するという簡単な造りとなっている。台座を介することで熱の伝導が適度に抑えられるので、火傷などの心配は皆無。台座の下はシールのような接着面になっているので、ツボの位置を外さずにピタッと貼り付られるという優れものだ。

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爪切男

つめ・きりお●作家。1979年生まれ、香川県出身。
2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。同作が賀来賢人主演でドラマ化されるなど話題を集める。21年2月から『もはや僕は人間じゃない』(中央公論新社)、『働きアリに花束を』(扶桑社)、『クラスメイトの女子、全員好きでした』(集英社)とデビュー2作目から3社横断3か月連続刊行され話題に。
最新エッセイ『きょうも延長ナリ』(扶桑社)発売中!

公式ツイッター@tsumekiriman
(撮影/江森丈晃)

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