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金髪モヒカンの市議会議員誕生! 「勝手につくば大使」に会いに行く

市議になった以上「勝手につくば大使」のタスキは選挙運動になる可能性が。ということで新しいタスキは「本人」だ。(撮影/畠山理仁)
市議になった以上「勝手につくば大使」のタスキは選挙運動になる可能性が。ということで新しいタスキは「本人」だ。(撮影/畠山理仁)

なぜ市議選に立候補したのか

 小村さんにとっていちばん大切なことは、「『勝手につくば大使』としての活動を続けること」だ。しかし、市議になれば活動に制約が出る。これまでは「勝手につくば大使」のタスキをかけて活動していたが、これからは「選挙運動だ」と言われる可能性が出てきた。市民から「選挙のために大使をやってきたのか」と思われるのも嫌だったという。
 
 大いに悩んだ末、それでも立候補に踏み切った最大の理由はなんだったのか。

「つくばのためになるのなら、人生を捧げたいなと思ったんです。恩返しですね。5年間活動を続けてこられたのは、受け入れてくれた人たちがいたから。つくばが大好きだから、生きやすい街にしたいと根っこから思っています。それに、やってみなきゃわかんない。ダメならダメでしょうがない。僕はつくばのことをもっと知りたいし、もっと役に立ちたい。『選挙のためにやってたんだろ』という声は背負っていかなきゃいけませんが、そこは自分のこれからを見て判断してもらえたらと思っています」

 ブログでは全く稼げていなかった。最近始めたYouTubeでは広告収入が入るようになったが、それでも生活できるレベルにはない。長年バイトを続けていた居酒屋も9月末に閉店してしまった。10月は選挙準備のためにアルバイトもできなかった。
 そんななか、市議選に立候補するのに必要な30万円の供託金はどうやって準備したのか。

「供託金はバイトの掛け持ちで貯めました。生活費は1食20円の『二宝菜』で節約しています」

 八宝菜と呼ぶには宝が六つ足りない。

「『二宝菜』とは、もやしとたまねぎと大量の刻みニンニクを炒めて八宝菜のように片栗粉でとろみをつけた節約メニューです。ニンニクたっぷりだから元気になっちゃうし栄養もあります。あとの食事は掛け持ちでバイトをしている居酒屋さんからまかない料理をもらってきてしのいでいます」

 そう話す小村さんのデスクの上には食べかけの丼料理が置かれていた。よく見ると、さっきまで食べていたようで、箸にご飯粒がついている。置いたままで大丈夫なのか。牛丼なのか、親子丼なのか。一見しただけではメニューの名前が浮かばない料理だったが、量はたっぷり確保されていた。

「勝手につくば大使」で出馬した理由

 小村さんが選挙に出るのはこれが初めてだ。他人の選挙を手伝った経験もないという。

「それまでは選挙の度に投票に行くぐらいで、市議会議員の名前も、どんな仕事をしているのかもほとんど知りませんでした。イベントなどでお会いする市議さんは何人かいましたが、先生だ、先生だっていう感じで、遠い存在。ほとんど接点はありませんでした。だったら自分が市議会議員の活動を勝手にどんどん知らせていこうと思ったんです」

 「勝手につくば大使」という「通称」で立候補するためには、選挙管理委員会で「通称認定」を受けなければならない。小村さんは2015年から活動してきた「勝手につくば大使」のブログのプリントアウト、これまで「勝手につくば大使」として発行してきたフリーペーパー、「勝手につくば大使 小村政文」宛に送られてきた郵便物を選挙管理委員会に提出して通称認定を受けた。

「その時はまったく揉めませんでしたね」

 そう小村さんは振り返るが、そもそも、「勝手につくば大使」という名前で立候補できても、当選できると思っていたのだろうか。
「全く読めませんでした。でも、20%ぐらいは可能性があるかなと思っていました」
 80%は落選を覚悟していたようだ。
「候補者が多かったし、選挙に対する知識もなかったし、政治とキャラの相性が合わないとも思っていましたね」

 では、どこに20%の可能性を感じたのか。
「『政治家っぽくないところが逆にいいよね』ってわかってくれる人が何人かいるんじゃないかと。『いけるっしょ』というほどの期待はなかったけれど、『期日前投票で入れましたよ』という反響もかなりありました。でも、まさか2401票も自分の名前を書いてくれる人がいるとは思っていませんでした」
 最低目標は30万円の供託金を取り戻すことだった。つくば市議選の場合、有効投票総数(93,127.998票)を議員定数の28で割り、その10分の1の得票(332.5票)があれば供託金は返還される。

 小村さんが獲得した2401票は、当選者28人中19位だった。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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