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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」
20年以上、国内外の選挙の現場を多数取材している、開高健ノンフィクション賞作家による“楽しくてタメになる”選挙エッセイ。


前回の第25回では、日本一の「保守王国」で知られる富山県の県知事選挙の投開票の様子を現地レポート。「選挙取材のプロ」が、当選した新田陣営で開票待ちをした理由、など読みどころ満載でした。

今回は11月1日に行われた大阪市の住民投票を現地取材。5年前にも現地取材した畠山氏が感じた大きな違いとは? 

“2回目のラストチャンス”も反対派多数。「大阪都構想」住民選挙の真の勝者は誰だったのか?

前回と明らかに違ったビラの種類と量。(撮影/畠山理仁)
前回と明らかに違ったビラの種類と量。(撮影/畠山理仁)

「大阪都構想」は2015年の住民投票に続いて再び否決された

 大阪の街を歩いた後、カラフルなビラでいっぱいになったカバンを見て思った。今回の住民投票における一番の勝者は「印刷屋さん」だったのかもしれない。

 11月1日夜、大阪市の有権者・約220万人を対象に行なわれた住民投票の結果が出た。この住民投票の正式名称は「大阪市を廃止し特別区を設置することについての投票」という。大阪維新の会が主導してきた、いわゆる「大阪都構想」(令和7年1月1日に政令指定都市の大阪市を廃止して4つの特別区に再編すること)への賛否を問うものだ。
 投票率62.35%となった住民投票の開票結果は「反対」が69万2996票(50.63%)、「賛成」が67万5829票(49.37%)。これにより「大阪都構想」は2015年の住民投票に続いて再び否決されたことになる。

 筆者は前回の住民投票時も大阪で取材をしていた。その時と比較しても、街中の盛り上がりはさほど変わらない。しかし、前回と明らかに違うのは、街中で配られるビラの種類と量だった。
 とにかく街中を歩けばビラを配る人に出会った。配布されるビラには「大阪都構想に賛成」のものもあれば「大阪市廃止に反対」のものもある。
 賛成派の大阪維新の会が開く「まちかど説明会」の会場では、同党のイメージカラーである黄緑色のスタッフジャンパーを着た人たちが「どうぞ」とビラを手渡す。そのすぐそばの駅出口では「反対派」もビラを配布する。しかも、反対派が配布するビラは一種類ではなく、何種類もあった。前回と比べると、あきらかに種類が増えていた。
 賛成派、反対派が展開する「投票運動」には公職選挙法が準用される。しかし、通常の選挙とは違う部分もある。CMやビラの枚数には制限がなく、事前運動や投票当日の活動も認められている。Tシャツに書く文言も自由。筆者のカバンがビラでいっぱいになったのは、通常の選挙とは違って「物量作戦」が認められているからだった。

 投票日当日も、賛成派、反対派の多種多様な宣伝カーが街中を「YES」「NO」と走り回ってにぎやかだ。その様子を見た大阪市民は「投票日当日も活動できるのはいい。忘れず投票に行けるから」と言っていた。
 街中では反対派が数人のグループになってビラを配っている姿をあちこちで見かけた。一人で街頭に立ち、自前の拡声器で「反対」の演説をしている人もいれば、大型のビジョンカーで「反対」を訴えるグループもいた。
 一言で言えば、前回よりも反対派の活動が活発化していた。誰もが気軽に政治的な声を上げられるのは悪いことではない。その一方で、「都構想賛成派」の動きは黄緑色の団体だけが目立っていた。

反対派のれいわ新選組、山本太郎氏の街頭演説。(撮影/畠山理仁)
反対派のれいわ新選組、山本太郎氏の街頭演説。(撮影/畠山理仁)
こちらも反対派、日本共産党の宣伝カー。(撮影/畠山理仁)
こちらも反対派、日本共産党の宣伝カー。(撮影/畠山理仁)
「都構想賛成派」では黄緑色の団体だけが目立っていた。(撮影/畠山理仁)
「都構想賛成派」では黄緑色の団体だけが目立っていた。(撮影/畠山理仁)
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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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