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日本370人、イラン約7500人! 国会議員選挙立候補者数の違いから考える「供託金」問題

供託金がなければ「選択肢」は増える

 日本の供託金の高さは国政選挙に限らない。都道府県知事選挙の供託金も300万円だ。これが政治の世界への高い参入障壁となり、立候補を断念する人が相当数いる。

 たとえば、筆者が取材をした2016年の東京都知事選には21人が立候補した。これは「定数1」の選挙では候補者が多い部類に入る。しかし、もし、供託金がなかったら、もっと多くの人が立候補した可能性がある。

 なぜ、そんなことが言えるのか?

 それは2016年の東京都知事選挙の際、筆者が立候補を考えていた人たちに接触して「立候補の意思」を確認していたからだ。

 報道されることがなかったから、多くの人は知らないと思う。この都知事選の際、選挙管理委員会に出向いて立候補に必要な書類を取りに来た人は、実は60人以上いた。
 筆者はそれらの人たちにギリギリまで連絡を取り「本当に立候補しますか?」と意思確認を続けた。
 明確に「立候補しない」と答えた人は数人だけだ。それ以外の多くの人は「必ず立候補します」と答えていた。「立候補届出の日、都庁で会おう」という人もいた。

 ところが、立候補届け出当日には40人近い人が立候補を断念した。筆者が立候補届出締め切り後に断念の理由を聞くと、多くの人が「供託金が高すぎた」と答えた。
 もし、供託金の存在がなければ、ほとんどの人が立候補していたはずだ。立候補を断念した候補者の中には、有権者が「投票したい」と思える人がいたかもしれない。「政治家のなり手不足」が叫ばれる現在、非常にもったいない話だと思う。

 海外では、一定数の人の推薦署名を集めれば立候補できる仕組みもある。ところが、日本ではこの仕組みは採用されない。
 現状の選挙制度で選ばれた人たちは、自分たちが勝てる仕組みを変えることに積極的ではないように見える。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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