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『42歳からのシングル移住』藤原綾さんと、“デュアルライフvs完全移住”良いとこ悪いとこ徹底トーク!

移住して初めてわかった東京のこと、田舎のこと

佐藤 地方に行くと、人の優しさに気づくことが多いんじゃない?

藤原 そうなんです。温泉に入っていても、居合わせた地元のおばあちゃんと「今日は暑かったねえ」なんて普通に会話がはじまるんですよ。人との触れ合いの濃さは、東京にいた頃と全然違います。この前も中目黒の道端でしゃがみこんでいる女の子がいたんですけど、通りがかった人はみんなチラチラ見て気にしつつも誰も声をかけないんです。そういう私も、「これはどっちかな〜? 具合悪いのかな? 休んでいるだけかな」と考えちゃって、なかなか声をかける勇気が出なくて。ちょっと離れた場所から様子を伺うことしかできなかったんです。

佐藤 霧島では違うの?

藤原 あっちだったら私、「どうしたー? 大丈夫ー?」ってすぐに声をかけたと思うんです。同じ自分でも、東京にいるときと霧島にいるときでは違いますね。東京は他者の介入を拒むような、迷惑がるような雰囲気があって、私たちもそれに慣れているじゃないですか。でも地方はそんなことなくて。実は移住して一番強く感じているのはそこかもしれません。

佐藤 山中湖村もそうだね。こっちは半分観光地だから、東京の感覚に近い面もあるんだけど、地元色の強いところではスーパーやコンビニのおばちゃんとも普通に世間話したりする。

藤原 そういう感じが、いいなあとつくづく思います。

霧島の藤原さん宅近くの風景。こんなの眺めながら毎日を過ごしたら心も洗われるだろう
霧島の藤原さん宅近くの風景。こんなの眺めながら毎日を過ごしたら心も洗われるだろう

佐藤 こういう連載をしていると、地方住みのメリットや良い面ばかりをアピールしたくなるじゃない。だけど、悪い面もしっかり話さなきゃフェアじゃないと思うんだけど。

藤原 確かにそうですね。東京に長年暮らした末に移住すると、ギャップに驚かされることは少なくないです。

佐藤 たとえば?

藤原 自治会の集まりに顔を出したとき、男性の座るスペースと女性のスペースがきっちり分かれているのにはちょっと驚きました。東京だとまず見ない光景なので。

佐藤 男尊女卑的な?

藤原 というより、区別がはっきりしているというか。

佐藤 そういうジェンダーのことも含め、東京みたいな大都市は世界の潮流をいち早く捉えて社会に反映するけど、地方はゆっくり浸透するところがあるからね。山中湖村も、歴代の村長がずっと同じ一族だったりして、「おお」と思ったよ。きっと我々が気づかなかっただけで、日本中のほとんどがそんな感じだったりするんだよね。

藤原 そうですよね。ペースが遅いだけでいずれは変わっていくんでしょうけどね。郷に入れば郷に従えという気持ちはあるけど、それを実践するのは結構ストレスかも。

佐藤 そうだね。「私、東京から来たんで」と、あえてよそ者の立場を貫く方がいいのかも。そういう異分子がきっかけで変わっていくこともあるんだろうし。

藤原 そうですね。

記事が続きます

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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