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爽やかな避暑地は凍てつく寒冷地。デュアルライフに向いている性格とは?

良かった、Mで。季節によってまったく表情が異なる地でも快適に過ごす性格

村域のほとんどが標高1000m前後に位置する山中湖村は、いわゆる高原の避暑地です。
“避暑地”といえば、どんな原初イメージがあるでしょうか?
1969年生まれの僕ら世代なら、パステルに染まったTelephone boxで出会った聖子ちゃんと俊ちゃんが、チョコレートをかじりながらパッと目覚めた清里高原の風景でしょうか。
あるいは、GASPを脱退して哀川陽司バンドの一員となったトーイが、初めて出会うメンバーとともに合宿生活を送った軽井沢とか。
古いね、どうも。

いずれにしても初夏から盛夏そして初秋にかけて、酷暑の都会から抜け出し、涼しく爽やかな空気の中で過ごす、きらめく青春の1ページという感じだと思います。
さまざまな作品の舞台となる高原も大体そんなイメージで、季節は夏でなければなりません。
そう言えば、山中湖にはこんな僕の青春の断片も落ちています。
高二のときの剣道部の夏合宿地が山中湖だったので、今でも湖畔に建っているそのときの宿舎の横を通るたびに、あの忘られぬ日々を思い出したりするのです。

まあそんな話は置いといて。

当然といえば当然ですが、避暑地にも冬はやってきます。
高原にある避暑地は、冬場は“寒冷地”という呼び名に変わります。
寒冷地である冬の山中湖は、ひっそり静まり返っています。
夏にはキャンプをする人や、SUP、カヤックなどのウォータースポーツに興じる人で賑わっていた湖畔の一角にも人影はなく、たくさんのハクチョウが我が物顔で過ごす野生の王国になっています。
一部氷が張った湖面には船もチラホラ見えますが、そのほとんどはワカサギ釣り客を乗せた静かなドーム船です。
ワイワイ賑やかな夏に比べると、“オフシーズン”という言葉しか当てはまらないのが避暑地・山中湖村の冬の姿なのです。

ハクチョウしかいない山中湖畔。
ハクチョウしかいない山中湖畔。

そして、そんな寂しく冷え切ったオフシーズンの雰囲気も「いいね!」と思えるか否かが、デュアルライフに向いている人かどうかを占うポイントなのではないかと思います。
僕の場合は前述のように、この地にとってのベストシーズンである夏ほどではありませんが、凍てつく冬の山中湖村もかなり好きで、条件さえ整えばいつでも行きたいと思っています。
良かった、Mで。

もちろんもっとお金持ちだったら、冬場を暖かく過ごせる南国にもう一軒家を持ち、トリプルライフを送れたら最高だとは思いますが、やっぱり叶わぬ願いでしょう。
ああ、金が欲しい。

連載初回「東京で生まれ東京に骨を埋めると思っていた僕が、デュアルライフを選んだ理由」はこちらから
本連載は隔週更新です。次回は3/16(水)公開予定。どうぞお楽しみに!

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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