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厳寒期の湖でふと思い出す、伝説のジャズフェスティバルと永井美奈子のこと

東京生まれ、東京育ちの“シティボーイおじさん”が、山中湖畔に中古の一軒家を購入! 妻、娘、犬とともに東京←→山梨を行き来する2拠点生活=「デュアルライフ」をはじめました。 音楽や読書など山の家での趣味活動から、仕事やお金のやりくりといった現実的な話題まで、 著者が実体験したデュアルライフのリアルを綴ります。 別荘暮らしが優雅な富裕層の特権だったのはもう過去の話。 社会環境や生活スタイルが大きく見直されている今、必読のライフエッセイです。

山中湖畔で開催されていたマウント・フジ・ジャズ・フェスティバルでアルバイト

かつて、山中湖畔の広大な空き地に設けられた特設会場で、一大野外ジャズフェスティバルが催されていたことをご存知でしょうか?
1986年〜1996年の毎年8月。国内外から集結した一流ジャズミュージシャンが、2日あるいは3日間にわたり名演を繰り広げたマウント・フジ・ジャズ・フェスティバル。
往年のジャズファンにとっては、懐かしい響きなのではないかと思います。

山中湖越しに望む1994年のマウント・フジ・ジャズ・フェスティバル会場。 (※)
山中湖越しに望む1994年のマウント・フジ・ジャズ・フェスティバル会場。 (※)

僕は大学2年生だった1990年、このフェスに参加しました。
といっても当時の僕はガチャガチャとやかましいハードコアパンクが好きなバンド系学生だったので、アダルトでソフィスティケートでおしゃれなジャズには興味がありませんでした。
オーディエンスではなく、会場係のアルバイトとしてマウント・フジ・ジャズ・フェスティバル体験をしたのです。

高田馬場駅発着の貸切バスによる送迎、宿泊・食事付きという条件、そのうえバイト代もまあまあ良かったので、友人とともに張り切って申し込みました。
しかしバブル期といえども、学生向けのバイトにそうそうおいしい話は転がっていません。
放り込まれたのはホテルでも旅館でもなく、汗臭い香りが漂う“合宿所”としか呼びようのないオンボロ宿舎。
狭い和室の中に隙間なくみっちりと布団が敷かれ、初対面のバイト仲間と肩や足をこすり合わせながらの雑魚寝でした。
極め付きは、晩飯のおかずです。
3日間とも同じメニューで、メインディッシュは冷めたアメリカンドッグでした。
アメリカンドッグはドライブ中にサービスエリアで食べるととてもおいしいものですが、1日働いて疲れたあとの晩御飯のおかずとしては最低です。

まあ、今さら言ってもしょうがないそんな愚痴は置いといて。
僕に課された仕事は、関係者を駐車場から会場へ案内・誘導する係でした。
何人もの海外招へいミュージシャンらしき人を誘導しましたが、僕にジャズの知識はほとんどありません。
ブロークンな英語で控室用テントへ案内した黒人は、きっと名のあるプレイヤーだったはずですが、果たしてあれは誰だったのか?

唯一、一発で顔と名前が一致したのは、日本テレビに入社2年目で人気が爆発していた女子アナ、永井美奈子でした。
マウント・フジ・ジャズ・フェスティバルは日テレの関連イベントだったので、レポーターとして来ていたのでしょう。
一緒に働いていた友人と「おお、永井美奈子だ! かわいい!!」と案内そっちのけで盛り上がっていたら、社員スタッフにめちゃくちゃ怒鳴られたのも、今ではいい思い出です。

こんなCDも出ていた。時代を感じるタイトルが泣ける。
こんなCDも出ていた。時代を感じるタイトルが泣ける。
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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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