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佐藤誠二朗「CITY BOYおじさん 湖畔でデュアルライフはじめました。」

爽やかな避暑地は凍てつく寒冷地。デュアルライフに向いている性格とは?

寒冷地である山の家で待っていたさらなる試練とは

そんなハートブレイキンな僕は、ここ1ヶ月の稽古で疲れた体と心を癒そうと、久しぶりにひとり山の家へと向かいました。
しかし車で家の前にたどり着いた僕の目に映ったのは、膝から崩れ落ちそうになる光景でした。

<ruby>何人<rt>なんぴと</rt></ruby>も立ち入りを拒むかのような我が家。
何人なんぴとも立ち入りを拒むかのような我が家。

約40cmはあるでしょうか? 
しっかり除雪されている道路との境もくっきり、家の庭にこんもりと雪が積もっています。
このままでは車を敷地内に入れることさえできません。

頭の中で自問しました。

Q.長靴は? A.玄関の中。
Q.雪かき用スコップは? A.家の半地下倉庫の中。

つまり、東京から履いてきたスニーカーのまま雪の中に突入し、玄関まで行かなければ何もできません。

一意専心いちいせんしん雲外蒼天うんがいそうてん克己忍耐こっきにんたい不撓不屈ふとうふくつ、平常心などと剣道熟語を思い浮かべながら、決死の覚悟で雪の中に足を踏み入れ、玄関まで長靴を取りにいきました。
途中、段差がまったく見えず、スキーのジャンプ台のようになっている屋外階段にひるんだりしながら。

ジャンプ台と化したアプローチの階段。
ジャンプ台と化したアプローチの階段。

そして、粉雪が舞う極寒のなか懸命に除雪をし、とりあえず車の駐車スペースだけは確保。
車をとめ、ほうほうの体で家の中に飛び込みました。
1ヶ月間太陽の光をまったく入れていなかった室内もキンキンに冷えていて、あらゆるものが凍りついています。
例によって水道管の一部も凍結しているようで、トイレもキッチンも洗面台も水が流れません。
南向きで、我が家の中では一番日当たり良好の位置にある風呂場の水だけはすぐに出たので、急いで風呂を沸かします。

20分後、雪かきのせいでびしょびしょになった服を脱ぎ捨て、熱々に沸かした風呂に飛び込むと、芯まで冷え切り固まっていた体は徐々にほぐれ、ようやく人心地つきました。
そして考えます。

まいったまいった……。
いったい俺は何をやっているのやら……。
のんびりしようと思って山の家へ来たのに……。
こんなに凍てつき、雪が積もりまくって……。
今夜も雪の予報だし、また冷え込むぞ、こりゃ……。
まったくもう……。
……なんだか、チョー楽しいじゃん!!!

これですよ、これ。
どんなに雪かきが大変でも、水道が凍りついて不便でも、山の家に来ると東京の家では味わえない非日常が待っています。
これが癒しになるのです。
たとえ、激しい剣道の稽古以上に雪かきがキツかったとしても。

余談ですが、痛い・きつい・臭い(IKK)の三拍子が揃う剣道に入れ込める人というのは、多少なりともMっ気を持つ人であるというのが僕の持論。
どうも真冬の山の家単独行で、その説は証明されてしまったようです。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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