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爪切男「クラスメイトの女子、全員好きでした」
小学校から大学まで――
さまざまなクラスで、それぞれの出会いがあった。
教室で、体育館で、廊下で、校庭で……。
時が経っても鮮明に思い出す彼女たちの面影。
ロングセラー『死にたい夜にかぎって』の著者が贈るスクールエッセイ。

前回は、フランス・パリからやってきた転校生と、ある日本のお菓子を通じた感動的なお話でした。
今回は、小学生時代の縄跳び大会が舞台。高学年になると男子の関心をどうしても集めてしまう、あのぶるんぶるんした物体への淡く切ないストーリーです。

僕とおっぱいの三年戦争

 クラスメイトの鳥山とりやま莉子りこを倒す。
 残されたチャンスは今年しかない。
 一九九一年十一月、小学六年生の私は「打倒! 鳥山」という目標を掲げ、日々の厳しい練習に励んでいた。
 いったい何の練習に。それは縄跳びの練習である。

 私の通う小学校では、毎年十二月に全校生徒による縄跳び大会が開催されていた。とくに「あや跳び」「交差跳び」など種目別で学年チャンピオンの座を決定する個人戦は常に大盛り上がりとなった。
 縄跳び上級者がこぞって参加する二重跳びの部において、私と鳥山さんは、昨年、一昨年と王座を争ったライバルである。しかし「縄跳びの申し子」と呼ばれる彼女の前に、私は二年連続、決勝の舞台で苦汁をなめさせられていた。同じ相手に三度負けるわけにはいかない。

 二重跳びの部は予選と決勝に分かれて行う。予選は二十分の制限時間の中で、詰まらずに何回跳べたかを計測し、回数の多い上位二名が決勝進出だ。
 決勝戦は、相撲の取り組みのように二名が向かい合う形で実施される。全校生徒の前で行われる一対一の果し合い。時間は無制限、二人一緒に跳び始めて、先に失敗したほうが負けという非常に分かりやすい試合形式だ。

 ガチガチの体育会系育ちの父親の勧めで、幼少期から縄跳びを友達替わりにして遊んでいた私は、持ち前の運動神経の良さも手伝い、調子が良いときなら、二重跳びを二百回以上は跳べるほどの腕前になった。
 二年続けて、予選をダントツ1位の成績で突破した私が、なぜ鳥山さんに勝てないのか。

 その原因は彼女の“おっぱい”にある。

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爪切男

つめ・きりお●作家。東京都中野区在住。2018年1月、『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。現在、週刊SPA!にて勤労エッセイ『働きアリに花束を』を連載中。2019年11月末に扶桑社より文庫版『死にたい夜にかぎって』発売予定。また、中央公論新社BOCにて好評を博した『男じゃない女じゃない仏じゃない』も来年書籍化予定。トークショー、物言わぬ変人役でのドラマ出演、サウナコンテストの審査員など、作家以外の活動も多種にわたって迷走中。

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