よみタイ

爪切男「クラスメイトの女子、全員好きでした」
小学校から大学まで――
さまざまなクラスで、それぞれの出会いがあった。
教室で、体育館で、廊下で、校庭で……。
時が経っても鮮明に思い出す彼女たちの面影。
ロングセラー『死にたい夜にかぎって』の著者が贈るスクールエッセイ。

前回は雨や台風が比較的少ない著者の出身、香川県ならではのお話でした。
今回は、まさかの異文化コミュニケーション? フランス・パリからやってきた転校生との、ある日本のお菓子を通じての感動的なストーリーです。

恋の呪文はネルネルネルネ

 人生で一人だけ、私のことを「ナイト」と呼んでくれた女の子がいる。
 漢字で「騎士」と書く「ナイト」である。
 たとえ「夜」という意味だったとしても、それはそれで格好良い気もする。
 要は、女の子に「ナイト」と呼ばれたら、なんだって嬉しい。

 私を「ナイト」と呼んだ女の子の名はパトリシア。
 遠くフランスから海を越え日本にやってきた転校生。
 私と彼女の出会いは小学五年生のときになる。

 一九九〇年五月、GW明けの気だるい朝のホームルームにて、担任の先生の口から告げられたのは、思いもよらない言葉だった。

「実は今日から転校生が来ます。なんとフランスからの女の子です。おうちの都合で一か月半しか学校には来れないんですが、みなさん仲良くするように!」

 転校生。
 なんと甘美な響きであろうか。
 自分がその立場になるのはまっぴらごめんだが、転校生を迎えることほど楽しいことはない。
「寝耳に水」の知らせに加え、転校生がフランス人ということもあり、クラスは一気に色めき立つ。もちろん私も、人生で初めて目にするフランス人への期待で胸をワクワクさせていた。

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爪切男

つめ・きりお●作家。東京都中野区在住。2018年1月、『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。現在、週刊SPA!にて勤労エッセイ『働きアリに花束を』を連載中。2019年11月末に扶桑社より文庫版『死にたい夜にかぎって』発売予定。また、中央公論新社BOCにて好評を博した『男じゃない女じゃない仏じゃない』も来年書籍化予定。トークショー、物言わぬ変人役でのドラマ出演、サウナコンテストの審査員など、作家以外の活動も多種にわたって迷走中。

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