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爪切男「クラスメイトの女子、全員好きでした」

ワックスの海を滑る彼女は、僕らの学級委員長

 私と中野さんは六年生になってからも学級委員に選ばれたが、残念なことに選出された学期が違ったので、もう一度コンビを組むことはなかった。小学校を卒業したあとは、彼女は宣言通り私立の名門中学に進み、それっきり再会することはなかった。

 実は一度だけ、高校生のときにJRの最寄り駅で中野さんを見かけたことがある。何に一番驚いたかといえば、さらに綺麗になった彼女の容姿よりも、とんでもなく大きく育ったその胸の膨らみであった。
 小学校のときはぺっちゃんこだった胸が、当時大人気だったグラビアアイドルの雛形あきこや山田まりやに負けないほどの巨乳になっているではないか。もしかしてあのワックスがけの時、床を滑ったことが偶然のマッサージ効果を生み、君の胸を成長させたのかい。
 もちろんそんな下世話なことを伝えられるわけもなく、私は電車に乗り込んで去っていく愛しの巨乳(おそらくFカップ)を見送った。

 二〇一九年、四十歳になった私は、久しぶりに連絡をとった地元の旧友から面白い話を耳にした。中野さんは順調に名門高校、東大と進学し、現在は霞ヶ関のエリート官僚として働いているらしいのだ。嘘か本当かわからないレベルの噂だが、本当にそうだったらいいなと私は祈っている。

 巨乳の中野さん、今もおっぱいは大きいですか?
 あなたが爆乳エリート官僚になったと風の噂で聞きました。
 小学校五年生のときに、一緒にワックスがけをしたこと、覚えていますか?
 学校で一番の優等生だった中野さんと、体中ワックスまみれになって遊んだことを、私は忘れることはないでしょう。
 そして今なら言える。
 中野美咲さん、私はあなたのことが好きでした。
 そして、今までいろんな人と一緒に仕事をしてきたけど、あなたを超えるパートナーには出会えていません。
 あなたは最高に可愛い女の子で、私の最高の相棒で、生涯最高の学級委員でした。

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爪切男

つめ・きりお●作家。東京都中野区在住。2018年1月、『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。現在、週刊SPA!にて勤労エッセイ『働きアリに花束を』を連載中。2019年11月末に扶桑社より文庫版『死にたい夜にかぎって』発売予定。また、中央公論新社BOCにて好評を博した『男じゃない女じゃない仏じゃない』も来年書籍化予定。トークショー、物言わぬ変人役でのドラマ出演、サウナコンテストの審査員など、作家以外の活動も多種にわたって迷走中。

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