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爪切男「クラスメイトの女子、全員好きでした」
小学校から大学まで――
さまざまなクラスで、それぞれの出会いがあった。
教室で、体育館で、廊下で、校庭で……。
時が経っても鮮明に思い出す彼女たちの面影。
ロングセラー『死にたい夜にかぎって』の著者が贈るスクールエッセイ。

前回は中学時代の霊能力美少女とのちょっと不思議で切ないお話でした。
今回は、ちょっとお腹が弱い少女とのエピソード。ゲロが連発されますが、こんな美しいゲロストーリーはありません。そして絶対に最後まで読むことをおすすめします!

宇宙で一番美しかった嘔吐

 白川しらかわ あすさは「キャベ」である。

 小学四年生の白川 梓は、ソバカスだらけの顔に、二つに分けたおさげの髪形がよく似合う「赤毛のアン」にそっくりな女の子。顔はそんなに可愛くないし、人と話すのが苦手で引っ込み思案な性格だったが、なぜか人の気を引く妙な愛嬌を持っていた彼女は、うちのクラスのマスコットキャラクターのような存在だった。
 だが、白川 梓は「キャベ」なのだ。
「キャベ」というのは、白川さんのあだ名である。そして、彼女がそのような奇怪な名で呼ばれる原因を作ったのは、何を隠そう私なのだ。

 それは二学期のこと。始業式のあとのホームルームが早めに終わった我々四年二組は、担任の先生の粋な計らいにより、運動場でドッジボールをして遊ぶことになった。
 今はどうか分からないが、一九八九年の小学生といえば、みんなで外で遊ぶとなったらドッジボール一択である。
「グーとパーでわかれましょ♪」で、男女混合の二つのチームを作って試合開始。教室では眠そうにしていた悪ガキ共、体育が得意な生徒たちが、水を得た魚のように校庭を元気に飛び回る。
 一銭の得にもならぬ球遊びに無駄な体力を使いたくない私は、外野からコート内の味方にパスを回す地味な役回りに徹する。自分自身は危険にさらされることのない安全な仕事である。

 そして、その時は突然訪れた。
 味方からのパスをキャッチした私の目の前で、大きくバランスを崩してズッコケる一人の女生徒。それが白川さんだった。

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爪切男

つめ・きりお●作家。東京都中野区在住。2018年1月、『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)にてデビュー。現在、週刊SPA!にて勤労エッセイ『働きアリに花束を』を連載中。2019年11月末に扶桑社より文庫版『死にたい夜にかぎって』発売予定。また、中央公論新社BOCにて好評を博した『男じゃない女じゃない仏じゃない』も来年書籍化予定。トークショー、物言わぬ変人役でのドラマ出演、サウナコンテストの審査員など、作家以外の活動も多種にわたって迷走中。

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