2020.1.30
学校のマドンナは水飲み場の妖怪
『トイレの花子さん』とは、学校にまつわる有名な都市伝説の一つである。誰もいないはずの学校のトイレに向かって「花子さんいらっしゃいますか?」と問いかけると、ある個室トイレから「はい」と返事がする。その声に誘われるまま扉を開けると、おかっぱ頭の花子さんにトイレの中に引きずりこまれてしまうという恐ろしい話だ。
私の通う小学校には『トイレの花子さん』は存在しなかったが、『水飲み場の妖怪』と呼ばれた女の子がいた。
妖怪の名は林 香澄さん。私が小学校六年生の時のクラスメイトである。
デビュー当時の広末涼子ぐらいショートカットがよく似合う女の子だった林さん。竹を割ったような真っすぐで明るい性格をしており、勉強もスポーツも人並み以上にできる優等生だ。芸能人で言えば渡辺満里奈に似た愛らしい顔をしており、160cmを超える身長と、バレリーナのようにスラリと伸びた細く長い手足は、ともすれば中学生、下手したら高校生に間違われても仕方のないぐらい大人びた女の子だった。
そんな林さんは、男子からすれば愛しのマドンナ、女子にしてみれば頼れる姉御という感じで、誰しもが認める学校の人気者であった。
だがその一方で、彼女は『水飲み場の妖怪』として恐れられていたのである。