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稲田ズイキ「罰当たりなほどにユルくてポップな仏教トーク」

スルーされるにも程がある!? 身近すぎて伝わらない仏教

身近すぎて伝わっていない仏教用語 Part2

どうですか? みんなついて来てる? え? もういいって!?
そんなこと言わず、今度はぶつ子のセリフを解説するからもうちょっと付き合っていただきたい。

ぶつ子:とにかくさ、その「私は主人公です〜悲劇のヒロインです〜」みたいな態度やめたら? あんたさ、奈良旅行してたとき、唐突に「孤独。退屈。鹿。ぴえん。」とかTwitterに言い残して、一人うろうろし出したじゃん? マジ焦ったかんね? 旅館の食堂にも、近くの公園にもいないから、無事なのかもわかんないじゃん? 迷惑だったのわかる? いつまで甘えてんの? でも、あんたが馬鹿なままで、ある意味安心したわ。「上品になりたい〜」とか「小松菜奈になりたい〜」とか「旦那は前澤社長がいい〜」とか言ってたのとあんま変わってないからさ。

⑬主人公
言われてみればよくわからない言葉「主人公」。この語源は有名な禅語からきている。あるお坊さんが毎日「おい主人公、目を覚ましなさい」と独り言を言い、それに対し自分で「はい」と返答していたという不思議な話。そこから「何にも左右されない確立した自分」を指す言葉になり、その後に物語の中心になる人物のことを指すようになった。でも、本来的にも仏教的にも、誰もが主人公である。

⑭退屈
「退屈すぎて首もげそう」→「暇つぶしにYouTubeでも見るか」→「5時間経過」これを仏教では無間地獄と呼びます(呼びません)。そんな何をやっても満たされない「退屈」という状態だが、元々は仏教語で、僧侶が修行に疲れて気力が萎えて屈することを言う。

⑮うろうろ
「うろうろ」これもオノマトペのように感じる言葉だけど、実はもろに仏教用語。どうもハルンケアが欲しくなる名前だが、「有漏うろ」といって、煩悩が流れて出ている状態を指す。反対に、煩悩から解き放たれた状態を「無漏むろ」という。そんな迷いの中で目的もなく彷徨う姿を「うろうろ」と表すようになったそうだ。

⑯食堂
まさかこれが仏教用語だと思った人は少ないのでは? 「食堂」は仏教では「じきどう」と言って、元々は寺院の中で修行する僧侶が食事をする場所を指した。「なんだ、僧侶も寺で飯食ってリラックスタイムあんのか〜」と、そんなに甘いものではない。仏道修行の中でも食事じきじは修行の一つ。命をいただくにあたって、自らの心を整えるための作法が必須なのである。ちなみに、僕は修行中に煮物の皿をひっくり返してしまい、はちゃめちゃに叱られました。

⑰無事
「無事」は安全であること、波風立たない状態を指す言葉であるが、元々は仏教用語。「平穏無事」といって、心に何のこだわりもなく、安定した状態のことをいう。ここらへんで、みなさんそろそろお気づきになっただろう。仏教用語がありすぎる。もはや空気のように使っている。もういい、もうたくさんだという気持ちとは裏腹に、仏教用語は止まることを知らない。

⑱迷惑
これも仏教語だ。その名の通り、真理から離れ、迷い惑うことをいい、現代の意味とは少し異なっている。おいおい、一体どれだけあるんだ仏教語。日本語と仏教が切っても切り離せない関係にあることは、ここまでの文量で嫌ほど理解いただいたのではないだろうか。

⑲馬鹿
実はこれも仏教が由来していると言われる(諸説あり)。サンスクリット語で「無知」を意味する「莫迦ばくか」「募何ぼか」に当て字を当てたものというのが通説だ。現役で古代インド語を日常会話で使っている日本人、すごくない?

⑳安心
えっ、これも仏教語なの? 「安心」は、仏教では「あんじん」と読み、悟りの境地に達することをいう。仏教では、恐怖や不安は自分の煩悩から生まれると考えられており、そうした心の惑いから解放された心の安らぎのことを指す。僕らは一体、一日に何回仏教語を使っているのだろうか。

㉑上品
「上品・下品」という言葉も正真正銘、仏教語だ。仏教では「上品じょうぼん」「下品げぼん」といい、実は中間の「中品ちゅうぼん」もある。これは人が臨終を迎え、西方極楽浄土さいほうごくらくじょうどという、いわば天国のような場所に行く際に、生前の徳の高さによって生まれ変わりのパターンが変わるのである。つまり、上品の場合、強くてニューゲームということになる。

㉒旦那
「ちょっと聞いてうちの旦那がまたパチンコで……」の「旦那」もガチガチの仏教語である。これもサンスクリット語で「布施」を意味する言葉。布施に関しては、以前の記事を参考にしてほしいが、つまるところ金品に限らず「与えること」すべてを指す修行の一つだ。それが時代とともに、「面倒を見る者」といった意味合いで使われるようになり、奉公人が主人を、商人が客を、妻が夫を呼ぶ言葉に変わっていたのだそう。

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稲田ズイキ

いなだ・ずいき●僧侶。1992年京都の月仲山称名寺生まれで現・副住職。同志社大学を卒業、同大学院法学研究科を中退、その後デジタルエージェンシー企業インフォバーンに入社。2018年に独立し、寺に定住せず煩悩タップリな企画をやる「煩悩クリエイター」として活動中。コラム連載など、文筆業のかたわら、お寺ミュージカル映画祭「テ・ラ・ランド」や失恋浄化バー「失恋供養」、煩悩浄化トークイベント「煩悩ナイト」などリアルイベントを企画しています。フリースタイルな僧侶たちWeb編集長。Twitter @andymizuki
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竹内佐千子

たけうち・さちこ●漫画家。おっかけ対象が男子で恋愛対象が女子のレズビアン。
自身の恋愛体験を描いたコミックエッセイをはじめ、おっかけ、腐女子、などをテーマにしたコミックエッセイを描き続け、最近はストーリー漫画も描いている。
赤ちゃん本部長』(講談社)、『生きるために必要だから、イケメンに会いに行った。』(ぶんか社)など。
ホームページhttp://takeuchisachiko.jp/
Twitter @takeuchisachiko

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