よみタイ

稲田ズイキ「罰当たりなほどにユルくてポップな仏教トーク」

今年の煩悩、今年のうちに! 除夜の鐘は心の大掃除だった

坊主なのに煩悩まみれ。
そんな俗世と浄土を行き来する、ユル〜い僧侶・稲田ズイキがお届けする仏教トーク。

前回は仏教用語の「縁起」を、はかない恋になぞらえて解説しました。
年の瀬迫る今回のテーマはずばり「煩悩」です。
みなさん、年末の風物詩、テレビで流れる「あの音」が、何のためのものか知っていますか?

年末、忘年会の終わりに「良いお年を〜!」と言われて、なんだか胸がソワソワするのは僕だけだろうか。

そう、もう一年が終わってしまうのだ。あれもしたい、これもしたい、もっともっとしたいはずだったのに。
え? 本当にもう一年が終わるの? こんな志半ばで年、締めちゃうわけ?

いやいや、まだ処女作が『すばる』や『群像』『文學界』に掲載されてないわけで。というか、まだ投稿もしていないわけで。というか、まだ小説の書き出しすら書けてないわけで。どしたどした、自分この一年、一体何して過ごしてたの? ずっと公園で野鳥の数かぞえてたわけじゃないよね?

この胸のソワソワの正体。それは「まだ終わってほしくない」という気持ちだ。別に今年に特別な思いを抱いていたわけじゃない。年末というわかりやすい時間の区切りが、365日前の自分と、現在の自分との距離を浮き彫りにさせるのだ。「あれ、俺全然、前に進んでないんじゃね? 前前前世どころか全然前進してないんじゃね?」と。

似ているものでいうと、夏休みの最終日、もしくは日曜日の午後4時。ただ同じ一日が終わるだけなのに、まるで地球最後の日のようにノスタルジーに浸ってしまう。映画『アルマゲドン』の地球に住んでいるモブキャラは同じ気持ちだったのだろうか。

あの星野源だって若い頃、自宅で紅白歌合戦を見ていると、孤独感に襲われて死にそうになったらしい。
そうなんだよ、俺にはまだやり残したことがあってだな。でももしかして俺はこのまま死相が浮かぶ年末を無限ループして……
いやだいやだ、まだ死゛に゛た゛く゛な゛い゛!!!!

現代の僧侶の端くれである僕のこんな姿を見て、ブッダはきっとこう言うのだろう。

「おやおや、穏やかじゃないねぇ」

ブッダの声がなぜか「CV.中尾彬」に聞こえることは一旦置いといて、心がこんなにジタバタしている僕の姿はまさに仏教でいう「煩悩」まみれなのである。

心身の毒になりうる煩悩ビッグ3とは?

煩悩って、なんか2次会の終わりにとてつもなくラーメンをすすりたくなったり、歌舞伎町歩いてたらムラっとくるやつのこと?

世間のイメージからすると、そう言われそう。たしかに、食欲や性欲も煩悩の一種ではあるけれど、あくまで一部でしかない。
煩悩とは、心や体を乱して悩ませて、正しい判断を邪魔してくる心のはたらきのことを指す仏教用語だ。だから、別に食欲・性欲のことだけを指しているわけじゃないので、煩悩を連呼してる僧侶がいても、スケべだなぁなんて思わないでください。

仏教では、この煩悩こそが苦しみの原因であり、煩悩とどのように向き合っていくかが、一番の課題として説かれている。
以前、このコラムで「この世にはどうにもならないことがある」として「一切皆苦」という言葉や、「四苦八苦」という8つの人生の無理ゲーを紹介した。そういうどうしようもない現象に出くわしたときに、心にバグを生成し、苦しみをもたらしてしまうものが「煩悩」なのだ。

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稲田ズイキ

いなだ・ずいき●僧侶。1992年京都の月仲山称名寺生まれで現・副住職。同志社大学を卒業、同大学院法学研究科を中退、その後デジタルエージェンシー企業インフォバーンに入社。2018年に独立し、寺に定住せず煩悩タップリな企画をやる「煩悩クリエイター」として活動中。コラム連載など、文筆業のかたわら、お寺ミュージカル映画祭「テ・ラ・ランド」や失恋浄化バー「失恋供養」、煩悩浄化トークイベント「煩悩ナイト」などリアルイベントを企画しています。フリースタイルな僧侶たちWeb編集長。Twitter @andymizuki
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竹内佐千子

たけうち・さちこ●漫画家。おっかけ対象が男子で恋愛対象が女子のレズビアン。
自身の恋愛体験を描いたコミックエッセイをはじめ、おっかけ、腐女子、などをテーマにしたコミックエッセイを描き続け、最近はストーリー漫画も描いている。
赤ちゃん本部長』(講談社)、『生きるために必要だから、イケメンに会いに行った。』(ぶんか社)など。
ホームページhttp://takeuchisachiko.jp/
Twitter @takeuchisachiko

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