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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

ヒゲは男が惚れる男のシンボル。大人だったらみんなヒゲ生やそうぜ!

仕事上で許されるなら、大人の男はなるべくヒゲを生やした方がいい。ある年代以上になれば、ヒゲは絶対かっこいいと思う。

僕ら世代にとって、かつてオシャレとヒゲは無縁のものだった。大学生の頃も社会人になってからも、男はなるべくきれいにヒゲを剃るのが良しとされていたと記憶している。
ところが1990年代後半、突如ヒゲブームがやってくる。竹野内豊やドラゴンアッシュの降谷建志、浅野忠信といったおしゃれ有名人がヒゲを蓄えるようになり、一般の若者の間でもトレンドになっていく。

いま考えるとはおそらくそれは、当時最先端カルチャーだったヒップスター=NYのゲイコミュニティの人たちの間で発生した流行が伝播してきたものだった。ヒップスターは、まるで山男のように顎から口周り、ほおまでつながる立派なヒゲを蓄えるのが大きな特徴だった。

そもそもヒゲというのは基本的に、昔も今も女性受けはあまりよくない。どちらかというと自己陶酔的な男のナルシシズムの表現で、男が好む男らしさの象徴なのだ。
2002年の日韓共催W杯のとき、デヴィッド・ベッカムのスタイルが日本中の男子に大きな影響を与えたこともあったが、男が惚れたベッカムもまた、ソフトモヒカンとともに無精ヒゲがシンボルマークだった。

僕にとって憧れのヒゲは、忌野清志郎がやっていた“ソウルパッチ ”

僕も20代後半からずっとヒゲを生やしている。いくつかのスタイルを試してみたけど、自分の顔に合うのは、うっすらとしたあごヒゲのみ。ほおヒゲや口ヒゲは似合わないので剃るようにしていた。
あごヒゲについては、ひとつハッキリとした実利的効果もある。顔の輪郭が強調されるので、すっきり痩せた印象になるのだ。

そしていま、この歳になったから試みたいヒゲスタイルがある。尊敬する忌野清志郎がずっとやっていた、下唇の下の部分だけを伸ばす“ソウルパッチ”というものだ。
1950年代にジャズトランペット奏者のディジー・ガレスピーに代表されるジャズプレイヤーとビートジェネレーションの若者、ソウルミュージシャンの間に広まったソウルパッチ。一説によると、トランペットなど管楽器の奏者がマウスピースをくわえたとき、クッションとなって唇の感覚が良くなるためにはじめたものだという。

清志郎はインタビューでこのヒゲについて聞かれ、「なんだ君は。レイ・チャールズを知らんのかね?」と答えたことがあった。最近話題になった人物でいうと、石野卓球もソウルパッチだ。

ただ、ソウルパッチはなかなか難しい。レイ・チャールズも忌野清志郎も石野卓球もかっこいいけど、下手に真似すると火傷を負ってしまう。僕もこれまで何回か試したけど、どうしてもコミカルな印象になってしまうので、「もう少し歳をとって、渋くなってからだな」と封印してきた。
でも、そろそろいい年頃かなと思っているのだ。

そう。どんなスタイルにろ、ヒゲは若い頃よりも我々グリズリー世代の方が似合うに決まっている。
だからやるなら今しかねえ!
僕は憧れのソウルパッチにするのだ!

あまりにも評判が悪かったらすぐ剃るけど。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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