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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

画一的で保守的になってしまった夏フェスファッションはいかがなものだろうか

もうすぐ夏フェスシーズンがやってくる。
スキーリゾート地である苗場で開かれるフジロックフェスティバルをはじめ、天候の変わりやすい山の中、あるいは強い日差しと風にさらされる海浜会場で、昼夜を通して開かれるロックフェスティバルは、“夏フェスファッション”という独特の服装文化を生んだ。

基本スタイルは、バンドTシャツにショートパンツ、虫や日焼け対策のスパッツ、スニーカーかトレッキングシューズ、つばの広いハットにサングラス、そしてリュックかウエストバッグの斜め掛け、首にタオルをぶら下げればいっちょあがり。加えて突然の雨に備え、長靴やレインウェアも必須だ。

これは、1990年代中頃の夏フェス黎明期から時間をかけて我々グリズリー世代が導き出してきたひとつの正解である。僕も第一回フジロックから、たびたび夏フェスに参加しているので、そうしたアイテムは一通り揃っている。

でも今、「本当にそれでいいんですかねえ!?」 と問いたいのだ。

特に若い子たちは何も考えず、シーズンが近づくと雑誌やウェブメディアで組まれる、“初めての夏フェス”特集を参考に、我々が苦労して編み出した夏フェスファッションを踏襲する。そうして、安易で無難な画一的ファッションで会場は埋め尽くされるのだ。

揃いも揃って同じ格好で声を合わせて「ヒューヒュー、イエーイ」なんて、それでもロックなのかね?

機能性を優先すると、皆と同じになってしまうのはわかるが……

そういうのがいやで夏フェスに行くのを躊躇している人もいると思う。実際、どのバンドを観にいっても、夜のクラブタイムでも、周りはおんなじ格好ばっかでなんだか萎えるんだよね。

でも機能性を優先すると、皆と同じになりがちなのも知っている。

何年か前、裸足にサンダルでフジロックに参加した僕は、好きなバンドでつい前方のモッシュピットに突っ込んでいき、見事に足の小指の生爪を剥がして救護所に駆けこんだ。
荷物が増えるのがいやで雨具をいっさい持っていかなかった年は、一瞬の豪雨でパンツまでビショビショになり、車へ戻って着替えていたら目当てのバンドの冒頭を見逃した。
タオルを巻かずに炎天下で一日中過ごしたため、うなじが焼け焦げた年もあった。

郷には入れば郷に従えともいうし、狙いすぎや場違いすぎるファッションも良くない。
今年もまた、どこかの夏フェスには参戦するつもりだけど、ちょうどいい塩梅で納得できるオレ流夏フェスファッションはないものかと模索中なのだ。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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