そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。
2019.6.13
画一的で保守的になってしまった夏フェスファッションはいかがなものだろうか
もうすぐ夏フェスシーズンがやってくる。
スキーリゾート地である苗場で開かれるフジロックフェスティバルをはじめ、天候の変わりやすい山の中、あるいは強い日差しと風にさらされる海浜会場で、昼夜を通して開かれるロックフェスティバルは、“夏フェスファッション”という独特の服装文化を生んだ。
基本スタイルは、バンドTシャツにショートパンツ、虫や日焼け対策のスパッツ、スニーカーかトレッキングシューズ、つばの広いハットにサングラス、そしてリュックかウエストバッグの斜め掛け、首にタオルをぶら下げればいっちょあがり。加えて突然の雨に備え、長靴やレインウェアも必須だ。
これは、1990年代中頃の夏フェス黎明期から時間をかけて我々グリズリー世代が導き出してきたひとつの正解である。僕も第一回フジロックから、たびたび夏フェスに参加しているので、そうしたアイテムは一通り揃っている。
でも今、「本当にそれでいいんですかねえ!?」 と問いたいのだ。
特に若い子たちは何も考えず、シーズンが近づくと雑誌やウェブメディアで組まれる、“初めての夏フェス”特集を参考に、我々が苦労して編み出した夏フェスファッションを踏襲する。そうして、安易で無難な画一的ファッションで会場は埋め尽くされるのだ。
揃いも揃って同じ格好で声を合わせて「ヒューヒュー、イエーイ」なんて、それでもロックなのかね?
機能性を優先すると、皆と同じになってしまうのはわかるが……
そういうのがいやで夏フェスに行くのを躊躇している人もいると思う。実際、どのバンドを観にいっても、夜のクラブタイムでも、周りはおんなじ格好ばっかでなんだか萎えるんだよね。
でも機能性を優先すると、皆と同じになりがちなのも知っている。
何年か前、裸足にサンダルでフジロックに参加した僕は、好きなバンドでつい前方のモッシュピットに突っ込んでいき、見事に足の小指の生爪を剥がして救護所に駆けこんだ。
荷物が増えるのがいやで雨具をいっさい持っていかなかった年は、一瞬の豪雨でパンツまでビショビショになり、車へ戻って着替えていたら目当てのバンドの冒頭を見逃した。
タオルを巻かずに炎天下で一日中過ごしたため、うなじが焼け焦げた年もあった。
郷には入れば郷に従えともいうし、狙いすぎや場違いすぎるファッションも良くない。
今年もまた、どこかの夏フェスには参戦するつもりだけど、ちょうどいい塩梅で納得できるオレ流夏フェスファッションはないものかと模索中なのだ。
