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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

タトゥーは是か否か~この論争に、そろそろ決着をつけようじゃないか

タトゥーは、ファッションの撮影現場やパンクバンドのライブに行けば珍しくもないし、僕自身は「かっこいいな」としか思わない。
でも日本では昔から粋なものという捉え方がある一方、アウトローの風俗というイメージが根強く、一般にはなかなか受け入れられないことはご存知の通りだ。

1990年代に青春時代を過ごしたグリズリー世代は、タトゥーに対して偏見が強くないのかもしれない。この時期、海外から急速にタトゥー文化が流入し、ファッションとして入れる若者が増えた。当時、僕が籍を置いていたファッション誌でも、タトゥーの特集を組んだりしたものだ。

そういえば、タトゥーの実践記事をつくったときのこと。
体験モデルは外部スタッフMさんが責任を持って連れてくるということだったのに、来たのは保護者の同意がない未成年だった。「どうすんのこれ!? 」という空気を察したMさんは男気を見せ、「代わりに僕が入れます! 前からやりたかったんです」と宣言。なぜか可愛らしいイルカのワンポイントタトゥーを、泣きそうな顔をしながら彫られていた。
Mさんとあのイルカのタトゥー、いま頃どうしてるかな?

青春とタトゥーが違和感なくつながっていた’90年代

1990年代はグランジからヘヴィ/ラウドロック、そしてメロコアへと流れるアメリカの西海岸ロックカルチャーが、世界の若者を虜にした時代。
西海岸系のアーティストやそのファンにはタトゥー愛好家が多く、夏場のライブ会場に行くと、肌を色とりどりに飾った若者が、健康的な汗をいっぱいかきながらモッシュしまくっていたものだ。

青春とタトゥーが違和感なくつながっていたあの時代。バブルは弾けたものの、若者はまだまだ元気で、やけっぱちではっちゃけたユースカルチャーがあった気がする。
まあ今でもYouTubeとかハロウィンの渋谷なんかを観ると、馬鹿な若者が大活躍しているから、僕は「いいぞー! もっとやれやれー!」と密かに応援しているんだけど。

僕も90年代は20歳代の若者だったけど、自分でタトゥーを入れたいとは思わなかった。
だって絶対キャラに合わないし、それに何よりイタイのキライだもん。

1990年代後半から2000年代にかけては、ニューヨークのゲイコミュニティの人たちに端を発したヒップスターカルチャーが勢いづき、形を変えつつも日本に伝わってきた。ヒゲやサングラス、チェックシャツなどとともにヒップスターの象徴だったのが、二の腕に施した派手なタトゥーだった。

こうした海外由来のタトゥーは、仄暗さや後ろめたさのほとんどない明るいカルチャーだった。そういうつもりでタトゥーを入れた人と、日本古来からのモンモン=ヤバい、という意識を持つ人がかみ合わず、現在も変なことになっているのは明らかだ。
もっとも、西海岸ロック系やヒップスター系タトゥーの流行が終わった後、日本に残ったのは“イカツイ系”だらけという側面も確かにあるのだが。

それにしても、海外からの旅行者がどんどん増えている今の日本。温泉やプールでも徐々にその受け入れ方が議論されているようだけど、果たしてどんな結論が出るのかな?

ところで三年ほど前、ツイッターから盛り上がり、局地的ブームになったアイテムがあった。
“タトゥーアームカバー”だ。
ストッキング素材でできたそれは、基本的には日焼け防止用だけど、実際に腕につけてみると想像以上に本物そっくりになる。車の煽り運転に対抗できるグッズとして紹介されたが、使い方は説明するまでもないだろう。
面白そうなので僕も買ってみたものの、あまりにも本物っぽくて怖いので、外では一回も使っていない。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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