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死にかけLOMOを自力で復活させたら、やっぱり最高のカメラだった

グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう―― そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

おもに若い女子の間でフィルムカメラのブームが続いているようで、大変素晴らしいことである。
僕は若くもなければ女子でもないただのおっさんだけど、このブームに便乗し、一時期忘れかけていたフィルムカメラを復活させてよく撮っている。

フィルムカメラは、とにかく無性に楽しい。
被写体を慎重に選び、光や距離などを考えながら、おもむろにシャッターを切るあの感じ。
デジカメ、特にスマホ付属のカメラで撮るのは軽いメモのようなものだとすれば、フィルムカメラでの撮影は俳句をひねるような感じだ。

フィルムといえどもコンパクトカメラが好きな僕は、富士フイルムが2005年に発売した名機、ナチュラブラックF1.9を中心に使っていることを以前にこのコラムで紹介した。
そして最近、傷んで使えなくなっていたもう一台のコンパクトフィルムカメラを自力で整備して復旧。
旧ソ連が開発したカメラ、LOMO LC-Aである。

ややレアもののメイド・イン・ソ連製LOMOだから大事に使わねば

1983年の旧ソ連において、日本製のカメラCOSINA(コシナ)CX-2をパクる形で開発されたLOMO LC-A。
かつてはソ連国内だけで年間150万台も販売されたが、ソ連崩壊後は生産中止になる。
しかし、このカメラを愛用していたウィーンを中心とする欧米の若手芸術家有志が支援し、ロシアで生産が再開された。

品質が不安定なため一台一台の性能にバラつきがあり、レンズ設計上の欠陥から画面周辺に光量落ちが見られるLC-Aは、そのダメダメなスペックが逆に愛され、1990年代末〜2000年代にかけて世界的ブームとなった。

LC-Aはかつてのソ連製、再生産以降のロシア製、その後に生産工場を移した中国製と、三種に分けられるそうだ。
ソ連時代のものは無印で、再生産以降のLC-Aはファインダーバリアに通称「ロモ蔵」と呼ばれるキャラクターが描かれている。

僕が持っているLOMO LC-Aは、実はちょっとしたレアもの。
「ロモ蔵」が描かれているので再生産期以降に販売されたもののはずだが、レンズバリアに記されているのは通常の再生産品の「MADE IN RUSSIA」ではなく、「MADE IN USSR」という文字。
つまりソ連時代に製造されてデッドストックとなっていたものが再生産品と一緒に出荷され、「ロモ蔵」マークを追加して売り出されたものだったと推測される。

そして僕のLC-Aは経年変化により、フィルム室への光侵入を防ぐ“モルト”と呼ばれるスポンジの接着剤が溶け、ベタベタのボロボロになっていた。
もう使い物にならないと諦めてしばらく放置していたのだが、調べてみるとこのモルト溶けは古いカメラには起こりがちなことらしく、自分で修理できるということが分かった。
モルトを新しく貼り直して生き返ったLC-Aで、最近は遊んでいるというわけなのです。

泣く子も黙るMADE IN USSRのLOMO LC-A。かわいくて仕方がない。
写りもやっぱり最高だ。
作例を何点か載せておくので、見てください。
この良さ、分かってもらえるだろうか。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

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