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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

“ミッドセンチュリー感”を手軽に味わえる、素敵な掛け時計

1969年生まれの僕が幼稚園〜小学校低学年だった頃、つまり1970年代に撮った写真を見返すと、愕然とさせられる。
ついこの前のような感覚もあるのだが、写っている街の風景は“The昭和”というノスタルジックな風情。
家の中には“The高度成長期”な、時代がかった調度品が並んでいる。
そしてThe高度成長期の中に少しだけ、ミッドセンチュリー風のおしゃれな家具も混ざっていたりするのだ。
いや、ミッドセンチュリー「風」ではない。
きっと1960年代に購入し、ずっと使っていたあの頃の実家の家具は、本物のミッドセンチュリーものだったのだから。

ミッドセンチュリーのインテリアは本当に素敵だ。
ヴィンテージはかなりの値段がするが、あらゆる作品は既にライセンス(最長25年の意匠権)が切れているので、デザイナーものであっても“ジェネリック家具”や“リプロダクト家具”と呼ばれる、サードパーティによる安価な新品が出回っている。

イームズだろうとヤコブセンだろうとイサム・ノグチだろうと、そっくりそのままのデザインの家具がそこそこの値段で買えるのだから、我々はいい時代に生きていると言えるのかもしれない。

デザイナーもの、なんちゃって、リアルなシックスティーズ

1990年代後半〜2000年代初頭にかけて、日本でもミッドセンチュリーの一大ブームが起こった。
ちょうどその頃、結婚して新しい家具を揃えるタイミングだった我が家は、ミッドセンチュリーな椅子やテーブルなどをいくつか買った。
だがその後数回の引越しを経た今では、ほとんど残っていない。

それこそ、どれも安価なジェネリック家具だったので、意外と使い勝手が悪いということに気づいたり、猫にいたずらされて傷んだり、子供が生まれて家具に求める要素が変わったりという理由で、ぽいぽいと粗大ゴミにしてしまったのだ。
高価なヴィンテージを買っていたらもっと大事にしていたかもしれないのだが、好コスパというのも良し悪しである。

さて、そんな我が家に残るわずかなミッドセンチュリーものが壁掛け時計である。
そうそう買い換えるものではないので、長年ずっと壁にかかっている。
1日に何度も目をやる時計に、ミッドセンチュリー感があるのはなかなか気分がいい。

一つはジョージ・ネルソンのミラークロック。
筐体部が全面鏡ばりになっていて、部屋の中や窓の外の風景が映り込む。
時間や四季の移り変わりによって見た目が変化するおしゃれな時計だ。

二つ目はアメリカンなヴィンテージ風インテリアで定評のあるDULTONのもの。
最近つくられた“なんちゃってミッドセンチュリー”な時計だが、癖のないシンプルデザインの中に、ほのかに香るミッドセンチュリー感がいい。

三つ目はSEIKOのもの。これは妻の実家で昔から使っていたものだから、正真正銘のミッドセンチュリーだ。
デザイナーが立っているわけではない工業デザイン製品だが、おそらく1960年代ものなので、時代のエッセンスがリアルに伝わってくる。
ムーブメントがダメになったので中身は交換修理をしているし、ガラスやボディに曇りが出ているのでお宝的な価値があるわけではないが、今後も大事に使っていこうと思っている。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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