よみタイ

聞かない女〜男への平和的質問の手法なんてある? の話
8月5日に、鈴木涼美さんの新刊『非・絶滅男女図鑑 男はホントに話を聞かないし、女も頑固に地図を読まない』が発売されました。
「よみタイ」でも大好評だった連載コラム、「○○○な女 オンナはそれを我慢している」「×××な男 酒と泪とオトコと美学」から厳選された30人の男女の話が1冊に!
令和を生き抜く現代男女の生態を、いまや各メディアで引っ張りだこの涼美さんが独(毒?)自の視点で分析します。

この刊行を記念し、本書の中から著者みずからが「特に思い入れが深い!」と厳選した各篇を、その理由と書籍未収録の画像(涼美さん自撮り!)とともに特別掲載。
毎週1篇ずつ、全6回の特別企画です!

聞かない女〜男への平和的質問の手法なんてある? の話

恋愛類天敵目シュラバ科
【聞かない女】
分類詳細:プライド属良識種
生息環境:いつの世でも輪廻転生
特徴:不安も不満も不審も親友

@鈴木涼美
30代女性の友人たちから聞く、最も多い恋のお悩みは、「好きとは言ってくれるけど、関係性に名前をつけてもらえない」

 MAXが「どんなふうにどれくらいにワタシのこと想ってる?」(※1)と歌ったのは1999年でその頃の私は同曲をパラパラの新作とともに口ずさんでいたのだけど、ちょうど同じ年に宇多田ヒカルは「I hope that I have a place in your heart too」(※2)と歌っていて、その二つを組み合わせると大体控えめな女の聞きたいことは完成する、と当時も思っていたし今も思っている。いや、別にそんな長ったらしい歌詞を引用して思いっきり世代感丸出しにするまでもなく、基本的に女の疑問は「私のこと好き?」なのだけど、男ってずるいからそう聞いたところで大体「好き」と言ってくるわけで、そうなるとこちらも追加注文をしたくなるわけです。

「すみませんがその好きってどういう系の好きで、ボリューム的にはどのくらいになるんでしょうか? 私は結構、っていうかかなり好きなんですけど、で、できれば付き合いたいとかやり直したいとかいうレベルで好きで、あなたとちゃんと彼氏彼女になってちゃんと誠実でいてくれるなら他の男は全部切ってもいいって思うんですけど、あなたもそういう感じなんでしょうか? それとも、こちらも好きだしあちらも好きだし選べないっていう割と次元が低い好きなんでしょうか? あ、もちろん前者であってほしいと思ってるんですけどね、私はそうなわけだし。ただ、やっぱり男と女って違いますし、あなたの態度ってちょっとどっちつかずというか思わせぶりというか、明らかに好意がありそうじゃないですか。かといって核心的なことは聞いたり言ったりしてこないじゃないですか。いったい私のことをどんな存在だと認識していて、私とどういった関係を結びたいんですか?」  
とかね。

 で、もちろん私みたいな脂ののった偉そうなオバサンがそんな風に詰問調で話しかけたら、もはや島耕作とかジェームズ・ボンドクラスの男でもドン引きするのはよくわかっているし、ぶっちゃけこれが私みたいなアレじゃなくて全然可愛くて若くてふくらはぎの綺麗な女だったとしても、このレベルで詰めたら基本的に男は嫌がる。だからMAX みたいないい女でも直接聞かずに歌っていたわけで、ほんとはこれをパッと出してさっさと答えてもらったら話は早いんだけど、良識と自意識が発達した女ほどこういったことを聞かずにためて、それが不安となったり不満となったりして少女漫画やラブソングが紡がれている。

 モテ指数が高い、というより、目的遂行能力の高い女は、この聞きたい疑問と良識のバランスがよくとれている人のことをいうと思う。

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鈴木涼美

すずき・すずみ●1983年東京都生まれ。作家、社会学者。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、東京大学大学院学際情報学府の修士課程修了。大学在学中にキャバクラ嬢として働くなど多彩な経験ののち、卒業後は2009年から日本経済新聞社に勤め、記者となるが、2014年に自主退職。女性、恋愛、世相に関するエッセイやコラムを多数執筆。
近著に『女がそんなことで喜ぶと思うなよ 愚男愚女愛憎世間今昔絵巻』など
公式Twitter @Suzumixxx

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