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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

ラバーソール〜発売から70年が経過した現在も、最先端の雰囲気を保つ不思議な靴

中高生時代、パンクを中心とするUKストリートカルチャーにどっぷりはまった僕には、憧れシューズが二つあった。ひとつはドクターマーチンのブーツ、そしてもうひとつはラバーソール(正式名称=ブローセル・クリーパーズ)だ。

学生時代に初めてモンクストラップのラバーソールを買った。当時、日本に正規輸入されていた唯一のラバーソール、イギリス・キングスロードの“ロボット”というブティックのものだ。これは今でいう別注品で、靴自体はイギリスの老舗シューズメーカー、ジョージコックス製だった。

そのラバーソールは何年も履き続け、最後はボロボロになったので捨てたが、30代前半で二足目のラバーソールを買った。
ロボットは既に閉店していたので、今度はブランド表記からジョージコックスのものだった。つま先が尖った大人っぽい型番「3705」を選んだ。1949年にジョージコックスが発表した、ラバーソールの原点に近いモデルだ。

僕が人生二足目のラバーソールを買ったのは、結婚式が理由だった

その時期にラバーソールを買ったのは、間近に自分の結婚式を控えていたからだった。僕は小柄な男だが、妻となる女性は比較的大きく、互いの身長差は2cmしかなかった。つまりハイヒールを履くと抜かされてしまうのだ。別にそれでもいいじゃんと思ったが、妻の方が嫌そうだったので、レンタル礼服で正装する結婚式はシークレットシューズ的なものを履いて凌いだ。
その後のパーティで妻はドレスにハイヒール、僕はギャルソンで買ったちょっとアバンギャルドなスーツを着たが、合わせる靴に迷いはなかった。ラバーソールでしょ!

ラバーソールはその見た目から想像できるように、異様に重たい。年中履いていると、変なところの筋肉が発達するほどだ。でも履き慣れると、振り子のような歩行法が身につき、普通の靴よりもむしろ疲れにくかったりする。

いろいろな意味で特殊な靴だが、ラバーソール履きにとっては、マイナス面も含めて愛おしいもの。好きな人には思い切り愛される靴なのだ。
世に出てからすでに70年も経つが、いまだに最先端のとんがった雰囲気を保っているのもラバーソールの不思議のひとつだ。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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