そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。
2019.5.16
ラバーソール〜発売から70年が経過した現在も、最先端の雰囲気を保つ不思議な靴
中高生時代、パンクを中心とするUKストリートカルチャーにどっぷりはまった僕には、憧れシューズが二つあった。ひとつはドクターマーチンのブーツ、そしてもうひとつはラバーソール(正式名称=ブローセル・クリーパーズ)だ。
学生時代に初めてモンクストラップのラバーソールを買った。当時、日本に正規輸入されていた唯一のラバーソール、イギリス・キングスロードの“ロボット”というブティックのものだ。これは今でいう別注品で、靴自体はイギリスの老舗シューズメーカー、ジョージコックス製だった。
そのラバーソールは何年も履き続け、最後はボロボロになったので捨てたが、30代前半で二足目のラバーソールを買った。
ロボットは既に閉店していたので、今度はブランド表記からジョージコックスのものだった。つま先が尖った大人っぽい型番「3705」を選んだ。1949年にジョージコックスが発表した、ラバーソールの原点に近いモデルだ。
僕が人生二足目のラバーソールを買ったのは、結婚式が理由だった
その時期にラバーソールを買ったのは、間近に自分の結婚式を控えていたからだった。僕は小柄な男だが、妻となる女性は比較的大きく、互いの身長差は2cmしかなかった。つまりハイヒールを履くと抜かされてしまうのだ。別にそれでもいいじゃんと思ったが、妻の方が嫌そうだったので、レンタル礼服で正装する結婚式はシークレットシューズ的なものを履いて凌いだ。
その後のパーティで妻はドレスにハイヒール、僕はギャルソンで買ったちょっとアバンギャルドなスーツを着たが、合わせる靴に迷いはなかった。ラバーソールでしょ!
ラバーソールはその見た目から想像できるように、異様に重たい。年中履いていると、変なところの筋肉が発達するほどだ。でも履き慣れると、振り子のような歩行法が身につき、普通の靴よりもむしろ疲れにくかったりする。
いろいろな意味で特殊な靴だが、ラバーソール履きにとっては、マイナス面も含めて愛おしいもの。好きな人には思い切り愛される靴なのだ。
世に出てからすでに70年も経つが、いまだに最先端のとんがった雰囲気を保っているのもラバーソールの不思議のひとつだ。
