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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

好き好きシャーツ〜ボタンダウンとライン入りポロシャツがあれば大丈夫

ニューウェーブ全盛期の英バンド、ヘアカット100が1981年にリリースしたデビュー曲『Favourite Shirts(Boy Meets Girl)』。僕はこの曲が好きで、いまもよく聴く。

ちなみに1970年代末から80年代にかけてブームとなった“ニューウェーブ”は、ひとつの音楽ジャンルではなく、パンクムーブメントで混沌となった音楽業界の中から新たに登場した、さまざまなスタイル全般を指す総称。ヘアカット100は、ファンクやラテンのリズムとノリをロックに融合させた“ファンカ・ラティーナ”というダンスミュージックの代表格バンドである。

えっと……、なんの話だったっけ?
そう、『Favourite Shirts(Boy Meets Girl)』!
リリースされた当初、日本のレコード会社がつけた邦題は『好き好きシャーツ』という、衝撃的にダサいものだった。
そして、僕の好き好きシャーツの話をしようと思ったらこんな長い前置きになってしまった。

アイビー、モッズ、そしてスキンヘッズが好んだ二種類のシャツ

クローゼットの中にあるシャツのうち約8割は、ボタンダウンシャツとライン入りポロシャツ。いずれも僕の好きなカルチャーであるモッズとスキンヘッズが、かつて愛用したアイテムだ。

1960年代前半、イギリス・ロンドンの若者の間で盛りあがったカルチャーがモッズ。でも彼らのスタイルが、アメリカのアイビーの影響下にあったことを知る人は意外と少ない。

1920年代に英国のポロ選手のユニフォームをヒントに、ブルックスブラザーズが開発したボタンダウンシャツは、1950年代にアイビーファッションの象徴的アイテムとして大ブレイクする。
アイビースタイルはフランスではフレンチアイビー、イギリスではモッズと形を変えながら若者の間へ広まり、彼らにとってボタンダウンシャツは欠かせないアイテムとなった。

一方のポロシャツもその名の通り、ポロ競技から生まれた……と思いきや、実はそうではない。ポロシャツの元祖は、名テニスプレーヤーのルネ・ラコステが1930年代に開発した衿付きニットシャツだ。
機能性に優れ、あらゆるスポーツに使える万能ウェアだったため、その後、ポロ競技のユニフォームにも採用された。本来であればテニスシャツと呼ぶべきものなのに、“ポロシャツ”と呼んで浸透させたのは、日本人だったとの説もあるようだ。

僕の好きなライン入りポロシャツは、フレッドペリーが1957年に発売した「M12」という型番が元祖。既製品のスポーツウェアをオシャレに活用したモッズの一派 “ローギア”の若者が好み、そこから発展したハードモッズ、スキンヘッズへと受け継がれたアイテムだ。

僕は今後もボタンダウンとライン入りポロシャツばかり着ていこうと思っている。
いずれも若者のストリートスタイルから発生したスタイルだが、グリズリー世代、またもっと高齢の人が着ても違和感なく、スマートに決まる優秀なシャツなのだ。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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