そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。
2020.4.10
伝説のトイデジカメ“Xiaostyle”で撮る、絶妙のエモ写真
コンパクトデジカメ好きだった僕は、2010年代の前半くらいまで、最新機種が出たらすぐに買わなければならないという、ある種の強迫観念にとらわれていた。
でもスマホのカメラ機能がコンパクトデジカメに匹敵するほど向上してからは、ぱったりと購買意欲がなくなった。
コンパクトデジカメ業界の斜陽化の動きを個人でそのまま映しとった、典型的な一般ユーザーというわけだ。
そんな僕が、最近すごくハマっている遊びがある。
’00年代に買い、お役御免となったあと、下取りも廃棄もせずに残していた古いコンデジを復活させているのだ。
古くは2000年発売のフジフイルムFinePix4700Z、2002年のソニーCyber-Shot DSC-U10。
リコーのGR DIGITALⅡ(2007年)、ライカX1(2009年)、キヤノンPowerShot S90(2009年)、アクションカメラの走りだったサンヨーの防水ムービーカメラ、Xacti(ザクティ) DMX-CA65(2007年)なんてのもある。
どれも皆、スペック的には完全にオワコンとなっているものばかり。
だけど当時はそれぞれのメーカーが、黎明〜発展〜熟成期のコンデジ界でリードを奪おうと技術の粋を集めて開発したものなので、いま使ってみてもそれぞれに味わい深い写真が撮れる。
対象の姿を正確に写しとるという性能では、本当にいまのスマホの方がずっと優れているかもしれないけど、それ以前にカメラの哲学のようなものを感じるのだ。
まあ、マニアックな話ですけどね。

当時の熱狂も冷め、忘れていたXiaostyleで撮ってみたら……
発掘した古臭いカメラで一通り遊んでみて、「やっぱりこれはすごい」と特別に評価したくなったのが、玩具メーカーのトミーが2005年に発売したデジカメ、Xiaostyle(シャオスタイル)TDG-501だ。
Xiaostyleは500万画素、固定式3段階切り替えフォーカス、それに安っぽいちゃちな筐体、測光機能もホワイトバランスもめちゃくちゃという、当時としてもダメダメなカメラ。
まあ、玩具メーカーがつくった文字通りのトイカメラなので、当然といえば当然だったのだが。
ところが、そのあまりにもしっちゃかめっちゃかな写りっぷりが逆に写真好きの心を震わせた。
当時はロシア製のフィルムカメラLOMOがすごく人気で、写真好きの間ではトイカメラブームが巻き起こっていた。
Xiaostyleは、デジカメなのにLOMOっぽい写真が撮れるということで、一気に注目されるようになったのだ。
発売時の定価は19,800円だったのに、一時はオークションサイトで6〜7万円で取り引きされたという、伝説的トイカメラなのだ。
オートで撮ってもいいんだけど、普通の日にわざと「雪景色」モードや「ビーチ」モードで撮ると、さらにわけがわからない描写となり、びっくり箱のような面白さがある。
当時はカメラ雑誌やネット上で、いろんな作例とテクニックの話が乱れ飛んでいた。
僕もその熱狂に参加した一人なのだが、それから十数年が経ち、Xiaostyleの楽しさをすっかり忘れていた。
そして久しぶりに使ってみたら、やっぱり最高だと思い知らされたのである。
ナチュラル感がまったくない、絵の具で塗ったような大げさなカラー描写や、逆光で撮ると簡単に発生する虹色のハレーション。
スペックのダメっぷりが、逆に感傷的で味のある写真を生み出してくれる。
フィルム時代のカメラのような、遠慮なしに入る日付もまたいいんだよね。
日付はもちろんオフ設定にもできるけど、僕は敢えてすべての写真に日付を入れている。
作例をどうぞご覧ください。
この伝説的カメラも、最近はメルカリなんかでたまにかなり安く出品されているようだ。
見つけたらゲットしてみましょう。


