そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。
2020.4.1
ファイヤーキングのヴィンテージマグカップに愛おしさを感じた話
誰も皆おなじだと思うけど、興味のある分野のアイテムについてはとことんこだわる一方、興味のない分野のものは、すべてが本当にどーでもいい。
僕の場合、音楽や本、ファッション、デジタルグッズ等については面倒くさいほどに一家言も二家言もあるのに、その他の分野はほとんど何にも知りません。
大人の男の多くが守備範囲に収める“食”についても、僕は興味がない。
その延長線上にあるからかもしれないけど、“器”関係にもまったく関心がないので、自分で積極的に買うことはなく、家では目の前にあるものを何も考えずに使うのみである。
このファイヤーキングのマグカップも、マニアが多いヴィンテージものだということはうっすら知っていたけど、特に意識することもなく、日常的にお茶を入れて使っていた。
そもそも、いつからどうして我が家にあるのかもよく覚えていない。
だいぶ前に仕事関係の知り合いに連れていかれた店で、ボーッとしていたらなぜか買わされていたものだったような気がする。
一対のマグカップ。
商品名は“キンバリーマグ”といって、1960~70年代に製造されたもののようだ。
でもこうしてよく見ると、確かに素敵だよね。

古き良きアメリカを象徴する、ポップで安価な大量生産品
そんなことをウダウダと考えていたら、だんだんファイヤーキングについて興味が湧いてきたので、調べてみることにした。
製造元のアンカーホッキング社は1905年にアイザック・J・コリンズという人物が6人の仲間とともに、オハイオ州ランカスターで設立した耐熱ガラス食器メーカー(創業時の社名はホッキングガラス社)。社名は、近くに流れる小さな川の名前に由来しているのだとか。
1942年、その耐熱性をアピールするために「ファイヤーキング」という名のブランドを創立すると、安価でポップなデザインの大衆向け食器が一般家庭やレストランに広く普及し、企業のアドバタイジングマグとしても人気となったそうだ。
つまり、古き良きアメリカを象徴する、大量生産の食器なのだ。
“キンバリー”というのは、南アフリカの都市名にちなんだ名前。
ゴツゴツした側面の菱形模様はダイヤモンドの原石をモチーフにしているので、ダイヤの産地から名前をもらったのだそうだ。
我が家にあるキンバリーマグは緑のグラデーションだが、他にも青、赤、黄、黄土色のグラデカラー、それに茶系クリアガラスのアンバー、ピカピカしたピンク系のピーチラスター、白系のオーロラなどカラバリが豊富。
塗装の具合は統一されておらず、製品一つ一つでばらつきがあって、その個性がマニアをより魅了するのだとか。
こうやってうんちくを頭に入れてみると、なんだかどうでもよかったこのマグカップがだんだん愛おしく思えてきた。
ファイヤーキング、いいかも!
今さらなんだよという話かもしれませんが、あしからず。