よみタイ

プラスチックにため息

物を減らす、無駄なことはしない、必要以上に買わない。 「しない。」生活のなかだからこそ、手に入れるもの、するべきことは 試行錯誤を繰り返し、日々吟味している群ようこ氏。 そんな著者の「しました、食べました、読みました、聴きました、着ました」 など、日常で「したこと」をめぐるエッセイ。 祝! よみタイ好評連載の『いかがなものか』発売! 書籍情報はこちらから!

今日は、これをしました 第1回

 生活のなかでプラスチック製品を減らそうと、日々、チェックしている。買い物のときにマイバッグを持っていくのは、多くの人がやっている。全員がレジ袋をもらっていたのに比べれば、これだけでもずいぶん違ってくるのだが、より強化しようと掃除のときのメラミンスポンジ、食器洗いのスポンジなどは、セルロースのスポンジや、ガラ紡のふきんに替え、保存容器は前から琺瑯ホーロー製かガラス製にしていて、 プラスチック、それから作られる不織布でできているものを、できるだけ排除するようにしていた。
 いちばんいけないのは、短時間で捨てられるプラスチックで、たとえばラップや、コンビニ、スーパーマーケットなどで使われる、惣菜や弁当の容器などだ。コロナウィルスで品薄になったマスクも、多くは紙製ではなくプラスチックでできている。これも使い捨てだけれど、使用目的からしてそれは仕方がないかもしれない。レジ袋も室内のゴミ箱用の袋として何度か使用し、それから処分するようにすれば、まだましかもしれないけれど、できれば家のなかに入れないようにはしたい。とはいえ買い物に行ってもほとんどの野菜はポリ袋に包まれているし、肉や魚はトレイにのせられラップに包まれている。いくらマイバッグを持っていっても、レジ袋の枚数は減らせるかもしれないが、それでもゴミの数は減ることがない。
 リサイクルをすればいいと、食品が入っていたトレイや、ペットボトルなどを、せっせと洗ってリサイクルボックスに入れていたが、実際はそれらすべてが国内でリサイクルされているわけではなかった。最初は中国が受け入れてくれていたが、それが断られるようになり、東南アジアの国々に輸出するようにしていたのがそれも断られてしまい、リサイクルボックスに入れれば、すべてリサイクルされていると思っていたゴミのほとんどは、ゴミのまま溜まっていくばかりになっていたというのだ。
 キッチンでいえば、肉や魚を包んだラップは、洗って再利用するのは、衛生上どうしてもためらわれるので、こちらは使ったらすぐに捨てるしかない。肉や魚以外だったら、ビーズワックス(ミツロウ)で手作りできるラップがあり、洗うこともできるのだけれど、衛生面の問題で肉、魚には使えない。『スタッシャー』という袋状の容器は大きさが三種類あり、肉や魚にも使えるのだが、手洗いよりも食洗機で洗うことをすすめている。食洗機を持っていない私は、肉や魚を入れた後、衛生的で問題が起きないように手洗いできる自信がなく、なるべく肉や魚は食べきれる量をこまめに買うようにし、スタッシャーのなかには、カットした野菜や果物などを入れている。たまにスタッシャーのサイトで紹介されていたレシピでおやつも作る。冷蔵はもちろん、冷凍、湯煎、オーブン、電子レンジで使えるのは画期的だと思った。
 着物の着付け用具にもプラスチック製のものが多くなってきている。私もこれまでは便利に使っていた。襦袢の衿に使う、差し込み式の衿芯や、帯板、帯枕。よく考えるとストレッチ式の足袋、足袋カバーにも合繊が使われていた。私が愛用している、とても履きやすいと評判の草履も、底がEVA樹脂とゴムでできていた。EVA樹脂は焼却してもダイオキシンは発生しないようだが、木製の下駄や天然素材の草履と違い、処分をするときに気をつけないと、環境に負荷をかける恐れがある。それらも徐々に排除して、昔ながらの着物の着付けに沿ったやり方をしていれば、綿、紙、絹でできているので問題はない。
 和装肌着によく使われるキュプラは、もともと綿からできているので、私が調べた範囲では、それほど環境に負荷はかからないようだった。しかし「プラスチック・フリー生活」(NHK出版)によると、レーヨンの一部は加工の段階で有毒な薬剤が使われる場合があり、これから調査が進むにつれて、布地の加工の段階で何かしらの問題が判明するかもしれない。洋服、肌着についても、洗うたびに微細な合成繊維が流れ落ちて、永遠に海に漂うというのを知って、洋服についても合繊のものはできる限り処分するようにした。冬に便利に使っていた薄手で暖かい機能性肌着も、着るとかゆくなるようになったので、一枚だけ残していたのを処分した。
 インターネットには、プラスチックフリーの生活をしている方が増えてきて、私もそれらのブログやサイトを見て勉強させていただいている。冬用の長袖の肌着が一枚もなくなった私は、それに替わるものが必要だろうと探していた。すると綿のダブルガーゼの長袖の肌着を使っている方がいて、それを買って着てみたら、柔らかくて肌触りがよくとても快適だった。合繊のものを着続けていると感じないが、天然素材のものを身につけると、体がほっとしているのがわかるし、かゆみもでない。今年は暖冬だったし、特に寒い場所にも行かなかったので、これで十分だった。『bodyhints』という商品名で、私が買ったものの価格は二千七百八十円+税。他にも様々なインナーがあり、タンクトップや半袖インナーと組み合わせると、もっと暖かいだろう。大人気の機能性肌着の陰に隠れているけれど、他のメーカーでもウールとコットン、ウールとシルクなどの素材で薄手の肌着も売られているので、そういうものもこれから試してみたい。

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『しあわせの輪 れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『小福ときどき災難』『今日は、これをしました』『スマホになじんでおりません』『たりる生活』『老いとお金』『こんな感じで書いてます』『捨てたい人捨てたくない人』『老いてお茶を習う』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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