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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

いつかヴンダーカンマー(驚異の部屋)をつくったろうと思っています

“ヴンダーカンマー”というものをご存知だろうか? 

Wunderkammerというドイツ語で、「驚異の部屋」あるいは「不思議の部屋」と訳される。
15〜18世紀にかけてヨーロッパの上流階級の人たちが盛んにつくっていた博物陳列室のことだ。

ときは大航海時代であり、貴族たちは世界中の様々な場所で発見された珍奇な品々――生物標本や貝がら、サンゴ、鉱物、化石などの自然科学ものから、考古学にまつわるもの、宗教的遺物、絵画、細工物、武具、数学や医学、天文学の道具、東洋の陶磁器やアンティークまで多岐にわたる――をせっせと集め、部屋に飾って愛でたという。

18世紀半ばには廃れた趣味なのだが、ヴンダーカンマーは現代の博物館の前身。
大英博物館はアイルランドのハンス・スローン準男爵(1660-1753)という人のヴンダーカンマーに収められていた蒐集物をベースにしてつくられたのだそうだ。

僕は以前、東京大学総合研究博物館による「驚異の部屋展」というものを見て強い衝撃を受け、ヴンダーカンマーに密かに憧れるようになった。

ガレージだけじゃない、男の趣味を凝縮した「男の洞窟」マンケイブ

じゃあ、“マンケイブ”という言葉はご存知でしょうか? 

Man Cave――直訳すると「男の洞窟」。
要するに、大人の男の趣味を凝縮した、隠れ家的くつろぎ空間のこと。
所ジョージとか岩城滉一とかヒロミとか、ああいうヤンキー系大金持ちは、マニアックな車やバイクを集めたガレージを築いていて、メディアでよく披露している。
うらやましいったらありゃしないけど、あれなんて典型的なマンケイブだ。

でもガレージはマンケイブの一形態にすぎず、ほかにもアウトドア、キャンプ、サーフィン、オーディオ、楽器、ゴルフ、釣りなどなど、大人の男の趣味の数だけマンケイブのバリエーションはある。
男だったら誰でも、可能であればそうした趣味の品々に囲まれた自分だけの癒し空間=マンケイブを築きたいという願望を持っているのではないだろうか。
少なくても僕はめちゃくちゃ持っている。

では、もしもその日が来たら、僕はどんなマンケイブをつくるか。
これまでに買い集めた大量の本とレコードとCD、それにどっかへ行くたびに拾ったり買ったりして集めている、ひとくくりではなんとも説明し難い自然科学系の蒐集物――貝がらや石ころ、昆虫標本、クジラのヒゲ、バカでかいひょうたん、鳥の羽根、ラッキービーンズなどなど――をあちこちに飾って、自分なりのヴンダーカンマーにしたいと思っているのだ。

写真に収めたものは、我が家に分散して置いてある蒐集物の一部。
恐ろしいことに、実はまだまだたくさんある。家の中がちっとも片付かないわけだ。

でも夢のヴンダーカンマーを目指して、もう少し頑張って集めたいと思います。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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