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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

愛聴アルバムがプリントされているのに外では着られないバンドT

Oasisと並び1990年代のブリットポップムーブメントを支えたバンド、Blurが1991年に発表したファーストアルバム『Leisure』。

このアルバムが大好きな僕はいまでもよく聴いていて、特にシングルカットされた7曲目の「There’s No Other Way」は珠玉の名曲だと思っている。
リアルタイムでは、学生時代に組んでいたバンドでコピーしていたし、いまでもカラオケにいけば必ず歌うほどだ。

ところで『Leisure』のジャケットは、なかなかぶっ飛んだもの。
花をあしらった派手なスウィムキャップをかぶった、眉毛がやたら濃い女性の顔のアップだ。
当時、音楽好きの間ではこのアルバムを指すとき「山瀬まみアルバム」と呼んだりしていたものだ。

この強烈な写真、アルバムのために撮り下ろされたものではなく、1956年に撮影された商業写真をトリミングして使ったものなのだそうだ。
ボーカルのデーモン・アルバーンがストックフォトの中から見つけて「美しい」と称賛し、そのままデビューアルバムのジャケットにしたのだという。

有名スタイリストは、「フォトTは女性がプリントされたものに限る」と言ったが……

で、僕はこのアルバムジャケットの写真をそのままプリントしたTシャツを持っている。

通販サイトで発見したとき、長年愛聴しているアルバムへの礼として、買っておかなければなるまいと思ったのだが、なかなか外に着ていく勇気が出ず、ほぼ寝巻きのような状態になっている。

フォトプリントTといえば僕は以前、あるムックの取材で、スタイリスト・野口強さんのTシャツコレクションを見せてもらったことがある。
野口さんは膨大な量のフォトTシャツを保有しているが、そのほとんどは女性の写真のプリントだった。
理由を聞くと、「だって、野郎の写真の服なんて着たくないでしょ」というシンプル至極な答えが返ってきた。

僕はバンドTシャツが大好きで、野口さんのコレクションには桁ひとつ及ばないが、結構な数を持っている。
でも男性のバンドが好きなので、バンドTは男の写真が中心。
これは好みと解釈によって人それぞれだからなんともいえないが、野郎の写真でも僕は別に嫌な感じはしない。

逆に決して外に着ていけないのが、この五十数年前の美女がプリントされたTシャツなのだ。

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新刊紹介

佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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