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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

秋が深まると着たくなる、オーセンティックなチェスターフィールドコート

フリーランスで仕事をしているので、毎日ラフな姿で過ごしているが、秋が深まってくると、カジュアルながらも少しだけオーセンティックなスタイルをしたくなる日がある。
そんなとき、一番しっくりくるアウターがチェスターフィールドコートだ。

チェスターフィールドコートはトレンドに浮上した6〜7年前からこっち、街でコンスタントに見られる現代の定番ウェアとなった。
長ったらしい名前を省略して“チェスターコート”と呼ばれることも多いが、ここは敬意を持って正式名称で呼びたい。
なぜならチェスターフィールドというのは、実在した人物の名前だからだ。

洒落者として知られたイギリスの6代目チェスターフィールド伯爵が1840年頃、最初に着たとされるオーバーコートがチェスターフィールド。
背広や背広の原型になったフロックコートと同じ、テーラードカラーと呼ばれる二段階衿が特徴だ。
格調の高い男性のフォーマルコートとされていて、本格的なものはモーニングのテイルを隠すために膝下までの長さがあり、前ボタンを隠した比翼仕立て、上衿にベルベットが施される。

長い歴史を持つ“ちゃんとした服”をラフに着崩すのもファッションの醍醐味

僕が愛用しているのは、そんなしちめんどくさいディテールをバッサリ省略したカジュアル仕立ての、言うなれば“なんちゃってチェスターフィールドコート”。
ベルギー・アントワープ系のウィム・ニールスというブランドのものだ。

それでも、格調高きチェスターフィールドに分類される服を着ているだけで、気分的にシャキッとするから不思議だ。

チェスターフィールドコートはテーラードジャケットと同様、胸元に“Vゾーン”と呼ばれる開きができる。
この特徴を活用するのがチェスターフィールドコートを使ったコーディネートの肝。

衿付きシャツを合わせるとかっちりしすぎた雰囲気になってしまうので、セーターやスウェットパーカなどを合わせるのが、カジュアル派にはちょうどいいのではないかと思う。
タートルネックのセーターも相性がいいけど、僕は首が詰まる感じがするタートルネックは苦手なので、クルーネックのセーターを合わせることが多い。
すると首元が少し寂しくなるので、アクセントとしてストールやマフラーを合わせる。

「我が名を冠したコートは、そんな風に着るものではない」と空のはるか彼方から伯爵が嘆いているかもしれないけど、ファッションとはまあ、そんなものでしょう。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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