よみタイ

佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

女もすなるネイルケアというものを、男もしてみむとて……無理!

思い返してみると昔一度だけ、爪をピカピカに磨いた、いや磨かれたことがある。
中学時代、O君というトランスジェンダーの同級生がいた。
ある日の休み時間、僕の席にやってきたO君は、「ちょっと手を貸してみて」と言うと、可愛らしいポーチからヤスリ的な道具を取り出し、せっせと爪を磨いてくれたのだ。

あれ、何か深い意味があったのだろうか……。
女の子のように綺麗なO君の爪に興味を持ち、「何か塗ってるの?」と僕がはじめに聞いたんだったっけな? 
あまりにも前のことで、記憶が曖昧だ。
爪ってこんなに綺麗になるんだと驚いたけど、結局、男子がこんなことしてどうすんの?という感想しか抱けなかった。

ところが最近、男のネイルケアが市民権を得ているようで、ちょっと驚いている。
試しに「男性 ネイルケア」でググってみたら1630万件もヒットして、ぐうの音も出ない。

メンズネイルサロンの宣伝文句曰く、「できる男はネイルケア」「名刺を出すとき、綺麗な指先だと自信が持てる」云々。
どうやら時代は変わったのだな。
個人的には、いまだにさっぱり理解できないけど。

もちろん僕だって、マジシャンや寿司職人、ピアニストなど、他人から指先を注視される仕事をしていたら、せっせと磨くと思う。
でも家で一人パソコンに向かい、シコシコと原稿ばかり書く日々だ。
ネイルケアの必要性、まったく感じないのだ。

爪切りは昔ながらのニッパー型、それも燕三条製のものに限るなり

そんな僕も、爪切りは一日置きくらいにしている。
伸びた爪がパソコンのキーボードにカチカチと当たる感触がすごく嫌いだからだ。
爪切り道具にも少しこだわりがあるので、それを紹介しようと思う。

現在愛用中のマイ爪切りはふたつ。
ひとつは小さなテコ型爪切りだ。確か、無印良品で買ったものだったと思う。
外出先で原稿を書こうと思い立ったとき、爪が伸びていることに気づいたらたちまちやる気がなくなってしまうので、いつでもどこでも爪切りできるように携行している。

もうひとつは、普段使いのニッパー型爪切り。
刃物の産地として有名な新潟県燕三条地域にある、古澤製作所というメーカーのものだ。
昔ながらのニッパー型爪切りは、一般的なテコ型より力が伝わりやすいのか、サクサクと切ることができる。
それに、さすがの燕三条製で刃先が鋭いのだろう。
切った爪の断面が滑らかで、指先の感触がとても気持ちいい。

難点はテコ型のように切った爪を内側に収納する機能がない点。
爪の飛ぶ方向を予測し、ごみ箱や広げた新聞紙で残さず回収するには少しコツがいる。
慣れるまでは机や床の上に新聞紙を大きく広げ、その上で切っていた。

でも、手間がかかるこの爪切りタイム、意外と嫌いではないのだ。
楽しそうにネイルケアをしている女性の気持ちが、ほんの一瞬だけ理解できる気がする。
メンズネイルについては、まだまだよくわからんけど。

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

関連記事

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

週間ランキング 今読まれているホットな記事